谷口さん、国際女性デーに伝えたいことは何ですか?


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谷口真由美氏

 3月8日の「国際女性デー」に合わせたオンライン企画「森氏の発言とスポーツ界のジェンダー平等」に法学者で日本ラグビーフットボール協会理事の谷口真由美氏が登場します。

 ラグビーフットボール協会の仕事に専念するため、メディア露出を控えている谷口氏がこのタイミングでどうしても伝えたいことはなんでしょうか。ウェビナーを前に取材しました。 (聞き手 慶田城七瀬、玉城江梨子)

 ー東京五輪・パラリンピック組織委員会の会長だった森喜朗氏が女性蔑視発言で辞任に追い込まれたのは記憶に新しいところです。森さんの発言がなぜこれだけ問題となり、辞任にまで追い込まれたのでしょうか。

 

 五輪の根本的なところに関わるから。五輪憲章が有名だが、実は五輪はいろんなルールを決めている。東京五輪は大会の準備・運営で調達が必要なすべての物品に「持続可能性」への配慮を求めた「調達コード」を定めている。その中には環境への配慮のほかに、性別や性的指向で差別されないことも記されている。これだけ細かく決めるのはいろんな国の多様な人が参加するから、共通の目線を持たないといけないため。

 オリンピック・パラリンピックはグロバールスタンダードとはなんぞや?を知らせてもらういい機会。世界のスポーツの水準、環境問題への取り組みの水準など世界の潮流に乗っていない国で開催することを想定していないという建前をIOC(国際オリンピック委員会)も持っている。スポーツをすることは人権の一部だったり、平和のためだと五輪憲章で決めているのに、今回の森さんの発言によって、日本では安心安全に暮らせない一つの性がいることが明らかになった、という意味でとても重い。

 また今回の東京五輪は出場選手の48%が女性で、これまでの五輪の中で1番参加率が高い。「ジェンダー平等」をものすごく掲げられるはずの五輪で、組織委員会のトップが全くそんな意識がなかった。

 

 

 ー森氏の発言は日本社会でのジェンダーの問題だけでなく、スポーツ界のジェンダーという問題も関係していると思います。

 

 そもそもスポーツ界は男尊女卑の塊みたいなところ。近代スポーツはイギリスのパブリックスクールから派生している。大英帝国の覇権を守る指揮官として動くために、パブリックスクールで男性に施された教育の一環が近代スポーツの成り立ち。もともと女性は排除されている。だから、スポーツにおける一流は男性で、女性は二流だったんです。スポーツはさわやかなもの、よきものとして語られるが、実は差別構造を内包している。女性指導者の少なさがセクハラの温床となっているという問題もある。

 日本的に言うと体育会系の上意下達や、有無を言わせない先輩後輩の関係性の中で日本のスポーツ界は進んできた。でもスポーツの語源は「楽しむ」。どうやって本来の意味のスポーツになるか。時代に合わせた形で社会が変わっているのに、スポーツだけが変わらないのはあり得ない。

 

 ーラグビーフットボール協会の仕事に専念するため、メディアでの仕事を「卒業」した谷口さんが、今回琉球新報のオンライン企画に出演するのはなぜですか。

 

 沖縄には生き生きしている女性たちもたくさんいるが、根底にあるジェンダー差別は根強いと感じている。トートーメー(位牌)継承問題に代表される固定化されたジェンダー役割が残っている。森さんの発言もそうだけど、時代に合わせてアップデートしていかないといけない。アップデートするために必要なのは人権を学ぶこと。人権は人間の中にもともと備わっている感情でも欲求でもないから、学ばない限り理解できない。

 これを機に男性もアップデートしないといけないし、男性の論理で動いてきた女性たちもアップデートしないといけない。女の人たちがアップデートできていないと感じるのは、たとえば「嫁姑問題」がなぜ固定化されて続いているのか。嫁姑が争う必要は本来ない。また、女の人が主に子育てを担っているなら、男社会、ジェンダー規範を再生産しているのは女の人の方だったりする。「男の子は泣いちゃだめ」とか子どもに言っている。男女こだわらず、みなさんアップデートしよう。

 

ウェビナー「谷口真由美さんが語る!森氏発言とスポーツ界のジェンダー平等」

 

【日時】3月8日(月)午後7時~
 
【出演】谷口真由美氏(法学者、日本ラグビーフットボール協会理事)、知花亜美(琉球新報地方連絡部長)

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