米兵絡む国際家事トラブルから日本人女性を支え15年 NPOウーマンズプライド


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今年で活動15年を迎えた国際家事NPO「ウーマンズプライド」のHP

 国際家事相談NPO「ウーマンズプライド」(北谷町)の活動が今年で15年を迎えた。米軍関係者と、日本人女性の間で生じる親権や養育費の未払い、子どもの面会交流の問題などを解決するため、基地のフェンスを越えて当事者間に話し合いの場を提供してきた。15年の活動を経て代表のスミス美咲さんは、沖縄に裁判外紛争解決手続き(ADR)機関の必要性を痛感したという。今月中旬に一般社団法人「国際家事支援アソシエーション」を設立し、将来的にはADR促進法に基づいた認証団体を目指す。

 在日米軍関係者の地位を定めた日米地位協定に基づき、米兵や軍属には日本の法律に基づいた財産の差し押さえなどができない。言葉や法律、慣習の違いもあり、深刻化したトラブルを日本人女性が交渉して解決するには高いハードルがある。

 ウーマンズプライドは女性たちからの相談を15年間で約750件受けた。スミスさんは在沖米軍人の夫を持ち、基地の制度や米国文化に精通する。女性の前から姿を消した米兵の部隊を断片情報から特定し、本人を探し出したこともある。米国の制度を活用して、日本人女性に対する養育費の支払いを、米軍関係者に命ずる米裁判所命令を勝ち取ったケースもあった。

 活動の傍ら、沖縄国際大大学院で国際家事について研究し、2月に修士論文を書き上げた。論文では米軍基地内の相談機関は助言が役割のため、問題解決にはつながりにくいと指摘。基地内には家庭裁判所の機能を持つ機関がないので、相手方が拒否すると当事者間での話し合いもままならないとした。

 そのため、法律や心理学の専門家らが集う日米合同の相談窓口に加え、調停人が当事者間の話を聞いて、合意までの解決策を導き出すADR機関の必要性を提言した。

 スミスさんは「基地内に国際家事事件の処理システムがないのが問題だ。基地の外で相談から解決までを担うシステムを構築しないといけない」と語った。(梅田正覚)