南城の沖縄戦を朗読配信 若手俳優が証言伝える「身近に知るきっかけに」


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朗読動画の収録を実施したジャスプレッソの(前列左から反時計回りに)照屋愛さん、井上あすかさん、仲間千尋さん、渡久地雅斗さん、山内和将さん、津波竜斗さん=2月28日、南城市役所

 【南城】今月刊行予定の「南城市の沖縄戦 証言編―大里―」について南城市教育委員会文化課は、同書に収録されている証言を若手俳優が朗読し、ユーチューブチャンネルで配信する。新型コロナウイルス感染拡大の影響により、沖縄戦体験者から直接話を聞くことが難しい中、証言の朗読を通して一般の人や若い世代に沖縄戦に関心を持ってもらうことなどが狙い。

 朗読を務めたのは演劇グループ・演撃戦隊ジャスプレッソの南城市出身の井上あすかさん(26)と、リーダーの渡久地雅斗さん(27)、津波竜斗さん(26)、仲間千尋さん(27)、山内和将さん(26)の5人。同課市史編さん専門員の山城彰子さん、照屋愛さん、山内優希さん、職員の新垣瑛士さんが企画し、実現した。

 2月28日、ジャスプレッソのメンバーが南城市役所に集まり、朗読動画の収録を行った。井上さんは、1944年12月の県営鉄道列車爆発事故を経験し「梯梧学徒隊」として沖縄戦に動員された旧大里村目取真出身の糸数禧子(よしこ)さんの証言を読んだ。糸数さんが燃える列車から命からがら逃げ出した経験や、沖縄本島南部で戦火の中をさまよった体験を、低音の力強い声で生々しく伝えた。

 井上さんは、この日の前に列車爆発事故の現場を見てきたという。「現場はよく通る場所だが、糸数さんの話を読んで事故を想像すると、これまでとは違った風景に見えた」と語る。

 大学の卒論では沖縄戦によるPTSD(心的外傷後ストレス障害)をテーマにした。「私と同じ若い世代や親の世代など、戦争を体験していない人たちにこの動画を見てほしい。沖縄戦体験者一人一人の証言を読みながら、平和の尊さを伝えたい」と気を引き締めた。

 このほか、仲間さんは学童疎開を体験した女性、津波さんは陸軍初年兵だった男性、山内さんは南部避難や戦果アギヤーを体験した男性、渡久地さんは旧南洋群島での戦争を経験した男性の証言をそれぞれ読んだ。

 ジャスプレッソで制作も担当する市史編さん専門員の照屋さんは「普段、メンバーで沖縄戦の話をすることはなかったので、朗読はとてもいい機会だった」と話す。また「この朗読配信によって、同世代がより身近に沖縄戦を深く知るきっかけになってくれたら」と期待した。
 

動画は今月中旬以降に文化課のユーチューブチャンネル「なんじょうデジタルアーカイブ」で配信予定。チャンネルはこちらから。
 (金城実倫)

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