ヒマワリ、思いつなぐ いわき市帰郷時に被災 鈴木さん<刻む10年 沖縄から、被災地から>5


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福島と沖縄をつなぐヒマワリの種を見せてくれる鈴木伸章さん =2日、浦添市内

 沖縄と福島を結ぶ絆の種は少しずつ広まり、花を開かせている。東日本大震災による東京電力福島第1原発事故後、ヒマワリの種を通して双方をつなぐ取り組みを続ける「福島・沖縄絆プロジェクト」副理事長の鈴木伸章さん(73)=浦添市=は活動を始めて10年を迎えた。「福島のことを忘れないでほしい」。毎年、沖縄と福島を往復し、思いを乗せた種をまき続ける。

 2011年3月11日、鈴木さんは母の一周忌のために故郷の福島県いわき市にいた。帰省した際は沿岸部の小名浜港で食事して漁港を散策するのが定番だったが、この日は食事を終えるとすぐに内陸部の実家に戻った。直後、携帯電話が緊急地震速報のメールを受信した。大きな揺れが襲った。30分ほど前にいた沿岸部は津波にのみ込まれた。

 「おふくろが守ってくれたかも」。当時を振り返ると鈴木さんはこうつぶやいた。

 妻と出会い1973年から沖縄で暮らす。故郷を離れた後も、沖縄で所属するボランティアサークル「クランクス」のメンバーらを引き連れて、福島を案内するなど、震災前から福島と沖縄をつなぐ懸け橋となっていた。

 11年夏、福島県内では各地でヒマワリが栽培された。土壌の放射性セシウムを吸収する効果があると言われたからだったが、実際は除染効果はほとんど無かった。「福島と沖縄をつなぎたい」と考えていた鈴木さんはこのヒマワリを生かそうと考えた。知人の紹介で種を譲り受けると、浦添市のイベント「てだこウォーク」のコース周辺に植えた。

 すると沿道には大輪のヒマワリが咲いた。それも福島なら雪が降りしきる2月。「冬にヒマワリが咲くのは不思議でならない」。次の年には福島県大熊町から36人がてだこウォークに参加するなど、人々の交流につながった。

 福島で採られた種を沖縄でまき、沖縄で採られた種を福島でまく。5月には福島へ種を届けるため、沖縄では3月ごろに花を咲かせるよう前年12月に糸満市摩文仁の平和祈念公園や北中城村で種がまかれる。この循環は今も続く。

 「沖縄は戦争、基地問題で苦しんでいる。福島は原発事故で苦しんでいる。沖縄の福島人として、生きている間は続けたい」と語る鈴木さん。今年も種をまいたヒマワリが花開く季節を迎えている。
 (仲村良太)

 

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