重量挙げ女子55キロ級の佐渡山彩奈(26)=宮古高―平成国際大出、いちご=にとって、東京オリンピック出場に向けた最大のライバルは五輪2大会連続出場中の八木かなえ(ALSOK)だ。この壁を突破するためには、トータルの自己ベストを10キロ伸ばす必要がある。ハードルは高い。だからこそ、大会延期に伴うこの1年は「挑戦できる期間が増えた」と好機として捉えることができた。フォームの改善、メンタルの強化―。できることを地道に積み重ねている。
昨春、コロナ禍で練習拠点である味の素ナショナルトレーニングセンター(NTC)が利用中止になったが、三宅義行監督と宏実親子の自宅に寝泊まりして鍛錬することに。リビングにマットを敷いての練習で高重量は挙げられなかったが、五輪メダリストの2人からいつも以上に細やかな指導を受けた。
最も注力したのは、効率良く力を使うフォームの探究だ。軽い重量を何度もこなしながら意識したのはバーベルを挙げる際に「いかに楽できるか」。これまでは腕力に頼り過ぎていたが、背筋や大殿筋をうまく使えると「重心の位置がいい時は軽く感じる。体の全部がつながった感覚」だという。
NTCの使用が再開された6月、成果が表れる。2カ月ぶりに高重量に触ると「バーベルがうまく体に乗る位置が定着していた」とフォームの無駄がそぎ落とされていた。背面の筋肉を意識してトレーニングしてきたことで、背筋のパワーも増した。
現在の自己ベストはスナッチ83キロ、ジャーク103キロだが、調子を上げていた昨年末には練習で84キロ、105キロに成功。着実に記録を伸ばす。しかし、まだ足りない。八木が代表選考の対象となる期間にトータル195キロを挙げており、目指すは88キロ、108キロのトータル196キロだ。
さらなる高みに向け、必要な要素に「重量慣れ」を挙げる。もう一つは精神面のコントロール。「元々あがり症で、自己ベストに挑戦する時は気持ちがあがっちゃう。練習でその重量に慣れ、自信をつけていきたい」と力を込める。
勝負は春に控えるアジア選手権。5月には27歳になる。「五輪出場は年齢的にもぎりぎり。1本1本に気持ちを込め、スナッチ、ジャーク、トータルで自己新を出し、東京五輪出場を決めたい」と自身に言い聞かせるように語った。
(長嶺真輝)