「当たり前」変えないと 事実婚・別姓の宮平・神谷さん夫婦 姓選ぶ権利、次の世代へ


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事実婚を続け「当たり前を変えないと」と笑う宮平貴子さん(左)と神谷邦昭さん=那覇市のククルビジョン

 選択的夫婦別姓の実現を求める活動が全国で活発化している。県内でも選択的夫婦別姓・陳情アクション沖縄が結成され、20日には当事者らが語るイベントが開かれる。映画監督で映画会社ククルビジョン(那覇市)の経営者でもある宮平貴子さん(42)と神谷邦昭さん(32)も事実婚で別姓で暮らす。「前の世代の女性たちが声を上げたおかげで社会は変わってきた。自分たちにも後の世代に選択肢を増やす責任がある」と実現を望む。

 宮平さんが映画制作、子ども国際映画祭と目まぐるしく活動していた2017年、神谷さんがククルビジョンの事務局長となり二人三脚で走り回る中、公私共にパートナーとなった。

 婚姻届を出せば改姓は必須だ。会社の登記簿や口座の名義変更に追われ費用もかかる。「周囲の女性経営者を見て大変そうだなと思っていた。絶対改姓したくないわけではなかったが、仕事に必死で考えたり手続きをしたりする余裕がなかった」と宮平さんは振り返る。

 ただ映画を通して行き来していたカナダでは、結婚後も姓を変えないのが一般的で改姓には申請が必要だ。「結婚は互いの家族も関わる。丁寧な話し合いが必要」と前置きしながら「姓を選ぶのは基本的な権利。女性の改姓が当たり前の現状は変えないといけない」と話す。神谷さんは結婚で女性が改姓するのは当たり前だと思っていたが「改姓が嫌だ」という女性の声を聞き「そうだよな、自分も姓を変えるのは嫌だと思った」。宮平さんとは「片方だけが負担して改姓するよりは、2人の姓を合わせて『神平』など新しく作ってもいいんじゃない」と提案したこともあったと笑う。

 現在は事実婚の別姓で問題なく過ごす2人だが「子どもができたら改姓を含めた法律婚を改めて考えると思う」という。同時に宮平さんの心に浮かぶのは後輩の女性たちだ。「姓を変えたくない人に選択肢がないのは残酷。後に続く人たちに影響するなら自分が姓を変えない選択もあるかな」

 次世代がよりよく生きられるように「『当たり前』を変えないと」。2人は顔を見合わせてうなずいた。
 (黒田華)

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 トークイベント「SDGsってナニ? ジェンダー平等ってなんですか~?」(選択的夫婦別姓・陳情アクション沖縄主催)が20日午後2~4時、無料でライブ配信される。お笑い芸人のせやろがいおじさん(榎森耕助さん)を司会に沖縄キリスト教学院大の新垣誠教授、コズミックコンサルティングの波上こずみ代表、沖縄弁護士会の西端裕子さん、林千賀子さん、陳情アクションのメンバーらがよりよい未来を話し合う。配信はこちらから。