医療従事者を対象にした新型コロナウイルスワクチン接種が、5日から県内でも始まっている。一方、各医療機関に届いたワクチンの数には限りがあり、現時点では希望者全員には行き届かない現状もある。北中城村の中部徳洲会病院は県内で唯一、1瓶当たり7回打てるインスリン用注射器を使用し、20日までに希望者全員にワクチン接種ができる見通しだ。
同院には、11日にワクチン140瓶が到着した。医師や看護師ら職員970~980人が接種を希望する。1瓶から5回分取れる通常の注射器だと700回分だが、インスリン用注射器だと980回分に相当する。
使用するインスリン用注射器は入院時に使用するもので、針の長さが12・7ミリと、通常使用する注射器の約半分ほど。使用に当たっては、同院の倫理委員会などで協議した。県内で同注射器が不足していないことを業者に確認し、職員に2回接種できる数を発注した。在宅や外来で使うインスリン用注射器の数には影響はないという。同院の感染対策委員会副委員長の新屋洋平医師は「計算上、希望者全員にワクチンが行きわたることになり、ワクチンを無駄にせず有効活用できる」と語る。
皮下注射用の針での筋肉注射になるため、本人の同意を前提とする。加えて、インスリン用注射器は針が短いため、エコー検査で腕の皮下脂肪の厚さを検査し、針が筋肉に届く1センチ以内の場所が確認できた職員にのみ使用する。
15~20日までの6日間で、接種が完了する予定。手術室に勤務する40代の女性看護師は接種後「注射時の痛みは少なかった。経過観察を終えた後も特に問題はない」と語った。新屋医師は「我々に使うはずだった分を住民へ回すことができ、結果として接種できる県民が100~200人増えることにつながる」と話した。