「県内にもまだいる」…今も厳しい叱咤残る 外部から見えにくい構造<「指導」の果て 部活生自殺>


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 「大変なことになった。なぜまだこういうことが起こるのか」。部活動の指導を苦にコザ高校2年生が自殺した可能性について報じた2月13日付の本紙記事の内容を知り、県内の男性指導者はすぐに本紙運動部へ電話を寄せ、驚きと落胆の気持ちを吐露した。そして「何人かの先生の顔が浮かんだ」と、ほかの部活動でも厳しい指導が残る現状を明かした。

 生徒は部活動の顧問の男性教諭から「主将をやめろ」「部活をやめろ」などと、日常的にきつく叱責(しっせき)されることを悩んでいたという。第三者調査チームの報告書は、自殺の要因について「部活動、とりわけ顧問との関係を中心としたストレスの可能性が高い」とまとめた。

 スポーツ指導では体罰が当たり前の時代もあったが、見直されてきた。大阪市立桜宮高校のバスケットボール部主将が体罰を苦に自殺した2012年の事件も大きなきっかけとなり、指導者への研修も推進されてきた。

 「桜宮」の後の対策で、厳しい口調で指導を続ける監督は消えたのか。男性指導者は「県内にもまだいる」と首を横に振る。「意欲を引き出すための叱咤激励なのかもしれない。しかし、そのような言葉の投げ掛けはナンセンスだ。大人でも叱咤に嫌な思いをする。モチベーションが上がればと生徒に求めるのは違う」と話した。

 部活動は顧問に一任され、外部からは見えにくい。「同じような指導をしている人はまだいないか。傍観者になってはいけない」と、個別事案として終わらせてはいけないという思いを抱く。

 別の男性指導者は「体罰はなかったようだが、言葉で苦痛を与えても人権侵害に当たる」と、人格を否定するような顧問の発言を疑問視した。近年のスポーツ指導では「選手、生徒の人権を大事にする意識が高まっている。時代の変化とともに、指導者も研修を受けてきた」と説明する。指導法を改める動きが広がっていることを挙げ、県内で生徒1人が亡くなるという深刻な事態が起こったことに「驚きが大きい」と残念がった。

 一方、指導法を巡っては依然として「厳しくあるべきだ」との指摘を受けることがあるといい、それが認められる現状は残っているという。

 別の指導者は「高圧的指導は時代遅れだ。体罰はもちろんだが、厳しい言葉も使ってはいけない」と語った。

(謝花史哲、稲福政俊)

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 コザ高校2年生の自殺を受け、第三者調査チームは部活動が要因となった可能性を指摘した。自殺を防げなかったのはなぜか。背景を掘り下げ、県内のスポーツ指導を取り巻く状況や課題などを探る。


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