県の新型コロナウイルス感染症対策専門家会議発足から1年が経過することを受け、座長の藤田次郎琉球大学大学院教授にこれまでの経過や感染症対策の難しさなどを聞いた。
―座長として心掛けたことは。
「対策が極端になってはいけない。県民の立場に立って、経済とのバランスを取りながら対策を決定する必要がある。多くの意見を集約し、県の方針との一体感を心掛けてきた。沖縄の医療は日本でもトップレベル。中部病院を中心にアメリカ型の医療が入り、組織力、チーム力、助け合いの精神は素晴らしい」
―専門家会議に経済の専門家は入っていない。
「7回目の時に(会議を)廃止し、再編することも考えた。対策を厳しくすればするほど経済が回らなくなる。医療の専門家会議と思っていたが、いつ緊急事態宣言を解除するかとなったら、経済とも絡んでくる。経済苦で誰かが自殺したらどうするのか。ただ、大城玲子保健医療部長が『専門家会議は残してください。専門家は感染症のことだけ考えてアドバイスしてくれたら、後は県で経済との調整は頑張りますから』と言ってくれた」
―2009年の新型インフルエンザとも違った。
「09年の新型インフルエンザでは22万人が感染し、約500人が入院。そのうち21人が人工呼吸器管理となり、3人が亡くなった。死者数だけで見ると新型コロナ感染症はその40倍以上のインパクトだ」
「(新型コロナは)きょう熱が出たとすると、そこから2日前まで(接触者を)さかのぼらないといけない。インフルエンザは熱が出てもその日に帰宅すれば、前の日に接触していた人は基本的には感染しない。2日後に熱が出るか誰も分からないから、感染を防ぐことが難しい」
―治療の難しさは。
「一般の肺炎と比べて死亡率が高く、さまざまな合併症も起きる。肺炎そのものを治癒できても、合併症で亡くなる症例を経験している」
「この病気を通して肺炎への理解が深まった。感染症と呼吸器を40年やってそれまでの積み重ねがある。本を40冊近く書いているが、いろいろ疑問があったものも、この病気を理解することでかなりの部分が解けた。未知の部分も多いが、これまでの肺炎診療の集大成のように感じている」