written by 比嘉璃子
市町村議会の無所属の女性議員が中心となって構成する「沖縄うないネット」は、地域や保革の垣根を越えて勉強会や情報交換に取り組んでいる。取材した日の勉強会は、食卓のテーブルを囲んで始まった。テーマは、米軍基地周辺で検出されている有機フッ素化合物(PFAS)についてだ。共同代表を務める玉那覇淑子北谷町議は「女性の視点から見えてくる生活の課題は多い。女性が抱える問題を議会で提言することは、地域課題の解決につながる」と強調する。
1998年に冬季オリンピックが開かれた長野県白馬村で、田中麻乃氏(38)=那覇市出身=は今年4月、2期目を懸けた村議選に臨む。仕事や育児で疲れていた時、「田舎暮らしがしたい」と夫にぽろっと話したことがきっかけで、2013年12月、白馬村に移住。17年に34歳で村議選に初当選した。
当初、議員になることは考えていなかった。冬の観光シーズンに頼る同村は、村民はアルバイトを掛け持ちしていた。「通年雇用の仕組みをつくりたい」と思った。それから官民連携の村おこし事業の受け皿となる企業の社長に就任したが、村の需要と事業内容に矛盾を感じ、辞任を考えた。そんな時、村議選の話を聞いた。
13年の村議選は現職議員が無投票で当選し、議会の評判は悪かった。「落ちてもいい。しがらみのない若い人が出られる選挙にしたい」と、17年の村議選に出馬した。家族の反対はなかった。選挙の総資金は約10万円。知人のコテージを借りて選挙事務所を置き、選挙活動は会社の友達やママ友が好意で手伝ってくれた。
自家用車を選挙カー代わりに自ら運転し、小型拡声器で「投票に行こう」と呼び掛けた。その様子を友達に撮ってもらい、YouTubeに投稿。政策について語る動画も公開した。斬新な活動スタイルに対し、誹謗(ひぼう)中傷の電話は多かった。他の候補者から「真剣にやっているから、お前も命懸けでやれ」とも。
一方、若い移住者が出る選挙に対し「村が変わるかも」という村民の期待は大きかった。これまで選挙に行かなかった村民や子育て世代から支援を受け、候補者13人中3位で当選した。
村議会の定数は12人で、60代以上の男性が大多数を占める。「早く帰って飯を作れ」。年配の男性議員はいまだに平気でそんな発言をする。「不倫している」など、身に覚えのないうわさもされ、1期目の4年間は「魔女狩りのようだった」と話す。
「仲間がいないと、しんどくて辞めていた」。1期目から仲間づくりに努め、来月の選挙には、ママ友2人のほか、議員活動に関わった20代女性が出馬する。
20代女性はこれから結婚や子育てを迎える。議員活動の中で結婚や出産を経験する議員がいなかったから、支援制度も作られてこなかった。「若い人が議員になりやすい環境を整えたい」という新たな目標ができた。
18年から半年に1回、「パリテカフェ@信州」を開き、男女平等の議会の実現を目指し、女性議員を増やすために必要な取り組みなどを周辺市町村の議員や市民と話し合う。「女性議員を増やすと、男の立場がなくなる」と、不平をこぼす年配の男性議員もいる。
一方、田中氏は「今は潜在的に男性が議員になるべきだと考え、地区から出る候補者で女性が外れている」と指摘する。議会に女性の声を反映させるため、クオータ制の導入に加え、討論に慣れていない女性が議場に立つためには、トレーニングが必要だと考えている。
世界的にも遅れている日本の「ジェンダー平等」。玉城県政は女性が活躍できる社会の実現を掲げ、県庁内に「女性力・平和推進課」を設置しましたが、政治や行政分野で「女性の力」を発揮する環境が整わない現状があります。女性が直面する「壁」を検証します。報道へのご意見やご感想のメールは、seijibu@ryukyushimpo.co.jpまで。ファクスは098(865)5174。
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