【深掘り】沖縄県内地価公示、コロナで冷え込み一気に…観光地で影響顕著


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商業地の最高価格地点となった那覇市久茂地3丁目のみずほ銀行前=23日午後、那覇市

 沖縄県内の公示地価は上昇を維持したが、上昇幅が大幅に縮まった。新型コロナウイルスの感染拡大の影響を受けた収益性の低下で、上昇基調が一服した形だ。特に、土産店や飲食店の閉店・撤退で空室が目立つ那覇市の国際通りなど、観光客向け店舗が集中する地域で影響が顕著に見られる。那覇中心部の商業地は、地価や賃料の高騰で事業者の収益が圧迫されるマイナス面がコロナ前から指摘されており、観光客の激減で地価が下落に転じた。

 沖縄県は入域観光客数や人口・世帯の増加を背景に、2018年から3年連続で5%以上の地価上昇が続いていた。地価は景気局面によって徐々に変動する「遅行指標」とされるが、感染症によって景況感が一気に冷え込み、観光関連事業者の多い沖縄の地価動向を短期間で左右した。

 ■投資リスク警戒

 感染症の流行前、県内への投資の中心となってきたのはホテルなど観光関連施設だった。上場不動産信託「Jリート」の公開情報によると06年以降、少なくとも県内で14件のホテル売買があり、不動産投資法人や県外企業による売買金額の合計は約1100億円に上っていた。

 しかし、投資関係者などによるとコロナ下で、ホテル売買はほとんど成立しなかった。ある県外投資ファンドの関係者は「感染症によってホテル投資にリスクがあることが、投資家の間で広がってしまった。逆に物流やオフィスの方が安定的なため好調で、観光関連施設の多い沖縄への投資に目が向きづらくなっているのは確かだ」と、慎重姿勢を見せている。

 それでも、沖縄観光の回復を見通した動きも表面化してきている。星野リゾート(長野県)は、那覇市松山にホテルを5月に開業すると発表。宮古島市に「ヒルトン沖縄宮古島リゾート」を建設する三菱地所と鹿島建設は、「今後、観光需要の回復に伴い、リゾート地としてのさらなる発展が期待される」と沖縄観光の可能性を評価する。

  ■期待と懸念

 不動産事業者も「沖縄観光の回復を見込み、まとまった土地や建物について問い合わせは多い」と語る。「買い手は『価格が下がる』と期待しているが、売り手側もまだ強気なところがあり、価格を下げず、結果的に売買が成立しないことが多い」と、“踊り場”にある現状を指摘した。

 りゅうぎん総合研究所によると、沖縄は人口と世帯数は増えているため住宅地の潜在的な需要は高く、木造分譲住宅など戸建ての供給は増加傾向にある。一方で、人件費など建築単価は上昇が続いており、アパートなどの着工件数は減少、分譲マンションの建設も弱含んでいる。

 久高豊専務は「コロナ前は県外居住者がセカンドハウスとして分譲マンションを購入する動きがあり、民泊の需要も入っていた。感染症で県外からの流入がなくなり、一気に需要が剝げ落ちた」と分析した。

 (池田哲平)

 

沖縄の公示地価一覧など詳細はデジタル版(紙面ビューアー)3月24日付6面

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