【識者談話】沖縄の地価公示、不動産鑑定士はどうみる?「将来性もあるが楽観もできず」


社会
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濱元毅氏(不動産鑑定士)

 住宅地は、新型コロナウイルスの影響で住宅ローンの支払いの原資となる世帯収入の弱含みがあり、不透明感が増している。ただリーマン・ショック時のような金融不安には陥ってはいないので、市場関係者は割と冷静に見ているのではないか。給付金やローンの債務免除、減額などの制度が整っており、売り急ぎや投げ売りは多くは見られなかった。

 リーディング産業の観光が大きな痛手を受けたため、国際通りやクルーズ船ターミナル周辺、火災があった首里城周辺など、那覇市内の観光関連施設周辺の地価が下落した。ただ、国際通りの不動産は希少性が高いので、買いたい投資家が列をなしている。

 旅行を待ちわびる人々は、コロナの収束後、海外よりもまずは国内に向かうと言われ、その中でも沖縄が選ばれるとの期待がある。投資家はコロナ後を見据えており、投資意欲は大きく減退していない印象だ。返還が決まっている那覇港湾施設(那覇軍港)周辺も地価が上がった。

 流通業と中小製造業の物流倉庫の引き合いはとても強く、工業地の地価は上昇した。沖縄では大規模な物流拠点を置けるエリアが限られているからだ。コロナ禍の巣ごもりでeコマースが好調になったほか、いろいろな業種が物流拠点を必要としている。

 今後どれだけ観光客が戻ってくるかが鍵となる。コロナやワクチン接種の動向に注視が必要だ。人々の行動変容も起きている。観光は国内旅行が中心となるかもしれないし、ワーケーション需要が増加する可能性もある。福岡を除く九州各県でホテル計画が完全にストップする中、沖縄では毎週のように100室単位のホテル建設計画が持ち上がる。沖縄の将来性は高いと思うが、楽観もできない。
(濱元毅氏、不動産鑑定士)

沖縄の公示地価一覧など詳細はデジタル版(紙面ビューアー)3月24日付6面
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