【記者解説】潜在再生エネの活用を実現するためには?


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 沖縄本島の再生エネルギー生産の「ポテンシャル量」は、2019年度の県内電力需給量の4分の3に上った。化石燃料を使わない再生可能エネルギーの活用は温室効果ガス削減の大きな鍵だ。ただ、示されたポテンシャル量は設備導入のコストを加味しない“採算度外視”が前提。民間住宅などの上に太陽光パネルを設置するなど、実現には私権への介入を伴うこともある。制度面や財政の後ろ盾、コストを大きく下げる技術革新などの条件がそろわなければ「ポテンシャル(潜在性)」を現実化させるのは難しい。

 ポテンシャル量は、技術的に導入可能性がある再生エネルギー量で、今後の技術革新次第で増えることもある。県は「あくまで理論上の値だ。太陽光パネルの設置などは家庭の費用負担の問題もある」と冷静に受け止める。50年までの温室効果ガス排出「実質ゼロ」を掲げる国が主導する、財政支援などが不可欠だという。

 太陽光パネルは台湾製や韓国製が安く、国産パネルの価格競争力強化も必要とされる。日中の発電エネルギーを蓄え必要な時に給電できる、高機能バッテリーの国際的な開発競争が進んでおり、系統安定化の技術開発と併せて注目される。

 風力発電は設備設置に関する国の審査基準が厳格化され、台風通過時などの風速の関係から県内に設置できる設備が限られ、普及は足踏みしている。県は設置基準の緩和を国に求めている。

 沖縄電力がCO2排出「実質ゼロ」を表明し、県も気候非常事態宣言を発表するなど、県内でも再生可能エネルギー利用拡大への機運は高まる。リスク、コストの両面で県内での原発導入は困難とされる中、温室効果ガスの排出量を引き下げるための「脱火力」と、再生エネの活用は加速するとみられる。

 (島袋良太)