<琉球料理は沖縄の宝 安次富順子>1 守りたい独自の食文化 王朝で日中料理が融合、庶民の「医食同源」も根幹


この記事を書いた人 Avatar photo 琉球新報社
宮廷料理を色濃く残す東道盆。料理は右上から時計回りで、小(ク)てぃんぷら、からし菜入りかまぼこ、田芋のから揚げ、肉(シン)かまぼこ、豚肉のごぼう巻、ミヌダル。中央は花いか。

 家庭で琉球料理離れが進んでいる。琉球料理は琉球王国時代の外交を通して独自性がはぐくまれた。伝統を有しつつ、医食同源に基づく庶民料理としても食されてきた。沖縄の「宝物」である琉球料理を受け継いでいきたいと、琉球料理保存協会理事長の安次富順子さんが料理と食文化、歴史などを月1回伝える。

歴史と特徴

 「琉球料理は沖縄の宝 守りましょう琉球料理」

 今、琉球料理が廃れつつあると危惧されています。琉球王国は1879(明治12)年に沖縄県になるまで約450年間続きました。王国時代から続く長い伝統を持つ琉球料理があり、素晴らしい食文化があります。琉球料理と聞けば、琉球王国時代の宮廷料理やその流れをくむ格式高い料理だけと思われがちですが、それに長寿を支えた庶民料理が含まれます。庶民料理は、貧しいながら知恵と工夫に医食同源の思想を加えた料理で、琉球料理の根幹をなす大切なものです。

 もてなし大切に

 王国時代、諸外国との交易を盛んに行い、多くの影響を受け料理文化をはじめ多くの文化が生まれました。琉球王国は、外交の手段として「客人を料理でもてなす」ことを大切にしてきており、宮廷料理の発達にも大きな影響を与えました。特に中国と日本の影響を深く受け、王朝の中で中国料理と日本料理が混ざり合い、中国料理でもない日本料理でもない独特の料理が生まれました。

 また、肉食文化、油脂文化、アジクーターといわれる濃厚な味わいを好む文化が発達し、魚文化を主とする淡白な和食との違いを顕著にしています。さらに清明祭、お盆、その他の祭祀(さいし)などに料理を供物としてささげ、その後皆で共に食べる「共食」という食習慣も琉球料理の継承を支えてきました。

 このように、王国時代からつながる料理は、その特殊性、数の多さ、質の高さのどれをとっても特筆すべきものであり、一県の郷土料理の域を超え一つの国の料理といえるほどで、まさに沖縄の宝として大切に守りたいものです。

庶民料理のマーミナチャンプルー

 共存と融合

 中国との関係では冊封使(さっぽうし)(中国皇帝から琉球国王任命のために派遣された使者)のもてなしがあり、中でも豪華な宴があります。冊封使が乗ってきた船には王冠が載せられていたことからその饗応料理は御冠船(うかんしん)料理と呼ばれています。この料理は、五つの段で構成された中国料理でもてなされ、燕(つばめ)の巣、フカヒレ、鹿のアキレス腱など高級食材が使われます。料理の数から二十碗料理とも呼ばれ、まさに満漢全席の一日に値するほどの量と質を誇っています。

 日本との関係では1609年の薩摩の琉球侵攻により、薩摩藩の支配下に置かれたことにより、薩摩藩の接待が始まり、さらに日本との交流も盛んになり、日本料理が作られるようになりました。

 このように琉球王朝の中に中国料理と日本料理が共存し、それが次第に融合し、中国料理でもなく、日本料理でもない独自の琉球料理を発達させて行きました。明治の廃藩置県後、王朝は消滅し宮廷料理は民間の上流階級に伝わり徐々に庶民へ広がっていきました。宮廷料理を色濃く残しているのが東道盆(トゥンダーブン)で王国時代の中国文化の影響を象徴する豪華な前菜入れで、手の込んだ乾肴などが盛り込まれます。

 久米村の影響もあります。14~15世紀に成立したとされる久米村(中国人職能集団が帰化した村)による中国文化の影響です。清明祭もその一つですが、1768年に王家祖先供養祭として初めて首里の玉陵で行われ、その後、徐々に民間にも広がっていきました。

 現在民間で行われている清明祭は、伝えられた当時とは違い重箱料理(別名・御三味(ウサンミ))の形式に変化しています。供物は、中国における祭祀の供え物の三牲(牛・羊・豚または豚、鶏、魚)が伝わったものとされています。

 終戦まで300年続いた遊郭辻(チージ)は、遊女が自ら作る料理でもてなす独特の形式のものでした。上流階級の客層が多く、そこで出される料理はその時代の最高水準をなし、料理文化の向上に影響を与えたといわれています。

 (琉球料理保存協会理事長)
 


 安次富順子(あしとみ・じゅんこ)

 那覇高校、女子栄養大学家政学部卒。1966年~2016年まで新島料理学院、沖縄調理師専門学校(校長)勤務。沖縄伝統ブクブクー茶保存会会長。主な著書に「ブクブクー茶」「琉球王朝の料理と食文化」「琉球菓子」など。


ウチャワキ

毎月第三木曜 琉球料理の日

 琉球料理にかかわりのある人たち(琉球料理の料理人、指導者、飲食業、観光関係の人など)が琉球料理を守り、育てようと2019年1月(一社)琉球料理保存協会を設立しました。「毎月第3木曜日は琉球料理の日」と定め、「琉球料理を食べましょう!琉球料理を作りましょう!琉球料理を伝えましょう!」をスローガンに活動をしています。県民一人一人が琉球料理に親しみ、また観光県としても琉球料理に力を入れ、さらに県外、世界への発信ができるようになることを願っています。