あすから総額表示、税込み価格に 店頭の切り替え作業が大詰め 


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 値札やチラシなどの価格表示を消費税の税込みとする「総額表示」が、4月1日から義務化される。本体価格が100円の場合、「100円+税」や「100円(税抜き)」といった表示は認められず、「110円」や「110円(税込み)」など消費者に分かりやすい表示が求められる。県内の小売店や飲食店などは店頭での表示切り替えを急ぎ、義務化に向けた作業は大詰めを迎えている。

商品価格を税別で表示していた土産品のポップを、税込み表示に切り替える店員=30日、那覇市の「国際通りのおみやげやさんシーサー館」

 ステーキハウス88グループを運営する「沖縄テクノクリエイト」はこれまで、メニューは税別価格で表示してきた。総額表示の義務化を受けて、税込みと税別価格の両方を並べる表示方法に切り替えている。

 金城康樹常務は「フードコートに出店する店舗の看板など、多くの部分を変えなければならない。手間もお金もある程度かかったが、法律で決まったので、仕方がない」と語った。全店舗の切り替え作業は31日まで続くという。

 一方、義務化の対応に苦慮する小規模店も多い。那覇市東町の居酒屋ヤンバルクイナは、これまで税別で表示していた。4月からも現在の表示のまま「税込み」価格として提供し、実質的な値下げに踏み切る。

 上原哲紀店長は「(税込み価格を表示して)価格が高いイメージがつくと、お客さんが来なくなる。メニューや看板を変えるにも10万円はコストがかかる」と語った。

 県内スーパーでは、既に総額表示を適用しているところもある。イオン琉球(南風原町)は、消費税が8%から10%に引き上げられた19年10月から、総額表示を適用している。均一価格のセールなどで「+税」と表記していたが、それも28日までに切り替え作業を終了した。

 サンエー(宜野湾市)はこれまで「+税」の表記だったが、3月から順次総額表示の切り替えを進めている。担当者は「総額表示で高く見えるという話しもあるようだが、当社としては今後買い物客の動向を注視する」と話した。

 県物産公社(那覇市)が運営する県内外の「わしたショップ」計11店舗では、全ての商品を税込み価格で表示している。店舗統括課の渡久地政和課長は「客が見やすいように以前から消費税込みの価格で表示してきた。どこに行っても総額表示なら分かりやすいので、価格表示を統一した方がいい」と評価した。

 安値販売を売りに観光客を呼び込みたい土産品店には、税別価格で表示している店舗が多いという。菓子製造・販売のナンポー(那覇市)の安里睦子社長は「総額表示を嫌がる店舗もあるが、(小売店に)義務化のことを伝え、作業を進めていきたい」と語った。

 書籍は流通期間が長く、途中で税率が変わる可能性を見越して、一般的に税別の価格表示が続けられてきた。新星出版(那覇市)では、4月以降に発刊する書籍について、帯や間に挟むスリップに税込み価格を表示する。既に3月に発刊した書籍でも、一部で税込みの表示を始めている。

 担当者は「税別の価格が本来の物の価値だが、見えにくくなるのではないか」とした上で、「消費税が上がる前からではあるが、今後は定価を考える際に、買う人に与える印象などをさらに検討する必要がある」と話した。