修学旅行を通して沖縄の中高生たちと交流を続ける滋賀県の近江兄弟社中学・高校の生徒たちがこのほど、首里城の模型を完成させ、同中学校内に展示している。2019年10月、修学旅行の事前学習で首里城について学んでいる最中に焼失した。「悲しんでいる沖縄の人に復興を願う気持ちを届けたい」と約1年5カ月かけて制作した。
近江兄弟社中学は2004年から沖縄への修学旅行を恒例としている。首里城焼失直後、生徒から「修学旅行はどうなるの」と戸惑いの声が上がる中、同中学3年副担任の林正樹教諭は「悲しんでいる沖縄の人たちに、私たちも同じ気持ちでいることを伝えよう」と模型の制作を提案した。10人の生徒が賛同し、同高校美術部の2人の生徒もサポートに入った。
模型は19年11月から制作を開始。20年2月には予定通り修学旅行で沖縄を訪れ、那覇市の興南中学・高校で、沖縄の歴史や文化を伝える活動をするアクト部の生徒らに焼失した首里城を案内してもらった。当時、近江兄弟社中学3年だった榊原詩さん(15)は「首里城は焼けて真っ黒で衝撃を受けた。興南の皆さんは使命感を持って私たちを案内してくれた」と話し、模型制作への思いを強くしたという。
20年春以降は新型コロナウイルスの影響で作業が中断する時期もあったが、放課後や昼休みを利用し、21年3月に完成にこぎ着けた。模型は縦65センチ、横75センチ、高さ60センチ。素材は主に木材と粘土を使い、屋根部分は取り外すことができる。正殿内部の再現にも力を入れ、玉座には照明を設置するなど工夫を凝らした。リーダーを務めた山本はる華さん(15)は「赤色に塗った竹串を首里城の広い屋根に1本ずつ隙間なく張り付けるのは大変だった。悲しみの中にある沖縄の人にも思いが届くように祈りました」と話した。
(名嘉一心)