沖縄県宜野湾市にある米軍キャンプ瑞慶覧・西普天間住宅地区の返還から、3月31日で6年となった。跡地は沖縄の発展に大きな役割を果たす「拠点返還地」に位置付けられ、琉球大学病院移設工事などが始まり、活用に向けた計画が進む。沖縄防衛局は返還に伴い土壌汚染や廃棄物などの「支障除去」を実施したが、その報告書は一般が閲覧できる形で作成されていない。市民が情報公開請求で得た沖縄防衛局の内部資料には、跡地で発見された有害物質の未公開情報が多く記載されていることも明らかになり、跡地整備の在り方に課題を残している。
西普天間地区の「磁気探査業務」というタイトルの報告書がある。液体が入った小瓶には、基準値の2倍に相当するダイオキシンが含まれていたことが記されていた。底面土壌で検出したドラム缶からは、基準値の1.3倍に相当するダイオキシンが見つかったという。環境調査団体「インフォームド・パブリック・プロジェクト」の河村雅美代表が沖縄防衛局への情報公開請求で得た資料だ。
防衛局は西普天間の引き渡しに先立ち、汚染調査を実施した。基準値を超えた鉛や油を含む汚染土壌が見つかり、土壌を処理した経緯は詳細に公開してきた。
跡地利用に向け、防衛局や県、宜野湾市などは協議会を定期的に開いた。協議会の場で、防衛局は16年度に廃棄物を「約66トン」回収したと報告した。マスコミに配布した協議会の資料には、「ダイオキシンの基準を超過する液体」が入った小瓶などが見つかり、既に処分したと記載されていた。だが、そうした汚染物質の内訳や数、検出された有害物質の値など、詳細なリストは一般向けに公表はされていない。
こうした状況に河村氏は危機感を示す。返還地で見つかった汚染情報について、検出結果などの一次資料や報告書が全て公開されなければ、市民が汚染実態や処理のプロセスを検証できないからだという。「防衛局が情報を加工した『説明資料』を自治体やマスコミに配布するだけでは不十分だ」と指摘した。その上で「『磁気探査』の報告書に汚染物質の詳細な情報が潜り込むなど、まるでマトリョーシカのような入れ子構造だ。情報の公開だけでなく、それを整理した報告書の作成も不可欠だ」と国の対応を求めた。
西普天間は2014年度末に51ヘクタールが返還された。不発弾などを取り除く「支障除去」を完了したとして、17年度末に地権者に土地が引き渡された。跡地利用推進特別措置法(跡地法)に基づく拠点返還地に指定され、琉大医学部や同大学病院の移転が予定され、跡地利用が進んでいる。
河村氏は今後予定される米軍牧港補給地区(キャンプ・キンザー)などの大規模返還を前に、跡地利用に注目が集まる半面、基地汚染除去の検証が置き去りにされる事態を懸念する。現行の跡地法は21年度に期限が切れる。「西普天間は『拠点返還地』第1号だった。跡地法の見直しを前に、県も西普天間の汚染除去プロセスを検証する必要がある」と強調した。
(島袋良太)