不確定多く募る不安 大型連休控え、観光業悲鳴


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オンラインで開催した経済対策関係団体会議で、まん延防止等重点措置の適用要請方針などについて説明する照屋義実副知事=9日、県庁

 新型コロナウイルスの感染急増を受けて、政府は沖縄県を「まん延防止等重点措置」の適用対象に追加することを決めた。県は適用に向けて9日午後、急きょ経済対策関係団体会議を開いたが、それまでの慎重姿勢から突然の方針転換となっただけに、支援策の説明などに不確定な部分が残った。会議の参加者からは「生煮えの印象を受ける。開始後に混乱しないか心配だ」との声も上がった。

まん延防止措置に沖縄追加

 適用地域では、午後8時までの営業時間短縮の命令に応じない飲食店などに、県知事が過料などの行政罰を科すことが可能となる。

■制度設計追いつかず 
 時短要請の対象となる飲食店などへの協力金は、中小企業が1日当たり4万~10万円、大企業は1日最大20万円とされている。営業規模によって変化し、重点措置適用外の地域への協力金と同等以上の額になる。

 県社交飲食業生活衛生同業組合の下地秀光理事長は「(協力金が)規模に応じた金額になるのは大きい。時短に踏み切る店は増えるだろう」と話す。

 内閣官房のホームページには、重点措置地域の飲食店などと取引する事業者にも支援金が支払われることが記載されている。だが、対象業種は明示されてはいない。飲食店に食材を納入する卸業者などが考えられるが、県の担当者は「現時点では、国から詳細が下りて来ていない。制度設計が追いついていない」と困惑した様子で話した。

 9日の県との会議に参加した経済団体の代表は「現状でも(県独自の緊急事態宣言の)協力金の支払いが追いついていない部分がある。新たな措置で、さらに手続きが複雑化して支払いが遅れれば、資金繰りがショートする事業者も出る」と不安を口にした。

■拡大する影響
 重点措置の適用期間は12日から5月5日までとなった。昨年に続き、大型連休に経済社会活動の自粛を余儀なくされる事態に、観光業界から悲鳴が上がる。

 那覇市内の大型シティーホテルでは、今週に入ってキャンセル数が新規予約数を上回っている。担当者は「ゴールデンウイークに向けた予約のピークが止まってしまった。4、5月の客室稼働率は50%と見通していたが、(重点措置の適用で)落ち込むだろう」とため息をついた。

 恩納村のリゾートホテルも、沖縄県に重点措置を適用する政府や県の方針が明らかになった8日から9日にかけて、5月初めごろに入っていた宿泊予約のキャンセルが目立っているという。

 県ホテル旅館生活衛生同業組合は、加盟施設のキャンセル状況について調査する考えだ。銘苅直子事務局長は「今後、キャンセルが出た分の補填(ほてん)を県などに求めていきたい」と話した。

 感染拡大の波を繰り返し、長期化する飲食店の時短営業によって影響は関連産業に広がっており、景気や雇用情勢の一層の悪化が懸念される。県ハイヤー・タクシー協会の東江一成会長は「夜勤は1日数千円しか稼げないこともある。運行を止めた方が赤字が少なくなるくらいで、事業継続を断念する会社も出ている」と話し、支援を求めた。

 浦添市屋富祖の「上原鮮魚店」の上原起雄店長は「スナックなどに刺し身を配達していた分が激減してしまった。行政の支援を切望する」と話した。

(沖田有吾)