【南城】南城市の西原サエ子さん(80)は昨年4月19日、長男の明さん(享年57)を新型コロナウイルス感染症で亡くした。自身もコロナに感染し、明さんの最期を見送れなかった。感染で家族は差別とも受け取れる扱いを受けた。さまざまな苦しみを味わったサエ子さんだが、明さんの死から1年が過ぎ「長生きして息子たち夫婦や孫を大事にしたい」と思えるようになった。
昨年4月初旬、明さんは気管支炎と診断された。2、3日が経過しても治らず、PCR検査で陽性が判明。サエ子さんも陽性となった。同18日、明さんは危篤状態に陥り、19日に息を引き取った。
明さんの火葬で家族は、防護服を着た葬儀業者がひつぎを運ぶ様子を、20メートル離れた場所から見守るしかなかった。三男の裕之さん(52)は「あの光景は一生忘れられないくらいショックだった」
サエ子さんは昨年5月12日に退院した。明さんの死を知らされたのは、帰宅する直前だった。サエ子さんは「(明さんは)元気で自宅にいると思っていたから、とても悲しくて言葉が出なかった。1カ月間はあまり眠れなかった」と振り返る。
サエ子さんは回復後も「集まりにはしばらく来ないでほしい」と言われた。裕之さんが経営する飲食店は客足が遠のいた。
「『あの店は家族にコロナが出た』とうわさが広がったと思う」と裕之さん。「病人なのに悪者扱いされるのはおかしい」と強調する。
明さんは中学校の社会科教諭だった。明さんの死後、元生徒や教員らが自宅を訪れた。「多くの生徒さんや先生方に支えられた明を誇りに思う。私は息子の分まで生きる」。サエ子さんは明さんの遺影を見詰めながら、誓いを立てた。
(金城実倫)
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