2016年4月に発生した米軍属女性暴行殺人事件を契機に国が設置した「沖縄・地域安全パトロール隊」(通称・青パト)が、新型コロナウイルス感染拡大防止の「まん延防止重点等措置」指定を受けて今月12日から本島全域の繁華街を中心に、空き巣など犯罪の抑止を目的に巡回している。識者は外出自粛を受けて「人出が少ない街中では犯罪は起こりにくいはずだ。パトロール隊が県民に早期帰宅を呼び掛けることもできず、費用対効果は低い」として、事業見直しの必要性を指摘した。
青パトは毎日午後7時~翌朝5時まで、100台体制で本島全域を巡回し、異常を見つけたら県警に通報する。今年1月20日に始まり2月末で終了した県独自の緊急事態宣言下で実施したパトロールの実績は、路上寝1件だった。
16年6月~21年2月の実績は1582件で、そのうち泥酔者対応が76・2%を占め、米軍・軍属関係は0・6%にとどまる。事件の「再発防止策」として始まった事業が、本来の目的を果たしていないことに対し、識者らは事業見直しの必要性を指摘してきた。
一方、沖縄総合事務局の担当者は、巡回は米軍や軍属関係者による犯罪だけを抑止するものではないとして、「目に見えないところで効果はあるはずだ」と評価している。
16~21年度までの予算総額は約46億1600万円に上る。初年度以降は年間約8億円を計上し、パトロール車両のリース代や隊員の給与に充てている。
国がパトロールを実施することについて、琉球大の獺口浩一教授は「国防戦略上、基地があるために起きた事件なので、当初は県民の感情に対処するという政治的な意味があった」と指摘する。一方で「地域の防犯は本来、自治体の役割で、国が積極的に関与するものではない」と述べた。
パトロール隊は発足から5年たつが、国が毎年度作成する「行政事業レビューシート」では、「犯罪を抑止し、県民の安心・安全を確保する」といった事業目的や在り方は変わっていない。
獺口教授は「防犯目的だと、自治体が行うパトロールと重複する。事業継続が必要かどうかも含めて、早期に見直しが必要だ」と強調した。 (比嘉璃子)