<コロナ資料黒塗り>「経済優先」が逆効果生むパラドクス 徳田安春氏(群星沖縄臨床研修センター長)【識者談話】


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徳田安春氏

 県が黒塗りにしたのは今回の資料で最も重要なページだ。感染のホットスポットに「接待を伴う飲食店」のみならず、観光業が含まれていたことが分かる。主要感染経路として観光業と飲食店から家族や職場につながって学校や医療機関、福祉施設などに広がったということだ。

 この図が黒塗りにされたことの理由は不明だ。別ページで「観光客を含み、県外から来県する人が多く、ウイルスの侵入点が多かった」と記しているものの、図の方が一目で分かる。緊急事態では行政の透明化が重要で、新興感染症に対抗していく上で、データを共有すれば皆でアイデアを出し合うことができる。

 県内で感染が拡大した背景には高い人口密度と、多い飲食の機会だけでなく、観光立県という要素もある。その点も指摘しなければ、県民の行動のみが要因となってしまう。観光が感染拡大の背景にある事実に向き合い、水際対策を強化すべきであり、今からでもすべきだろう。

 国も県も「ウィズコロナ」を掲げている。その選択は県民の生活に打撃を与えた。政府と同じ対策を取り、夜の街や飲食店の時短要請が主要な対策となった。しかし、昨年3月から世界保健機関(WHO)も封じ込めが可能だと推奨していた。ウィズコロナ政策は経済を優先しているかのように見えて実は経済が回りにくくなるというパラドックス(逆説)に陥ってしまった。
 (臨床疫学)