エンタメ

<シネマFOCUS>愛のコリーダ 「純愛」への幻想、形に

 アートかエロスかって?いいえ、どちらでもありません。これは純愛です。私の抱く「純愛」への幻想を、大島渚監督が形にしてくれました。

 主人公の定は藤竜也演じる吉さんのことを、好きだ好きだと言うけれど、もはや吉さんを好きなのか、吉さんの体が好きなのか分からない。とにかく、何かに取りつかれたように、吉さんに執着している。でも、吉さんの愛はすごい。こんな風に愛してくれるなら、そりゃあほれちまう。

 身勝手にぶつけられる定の愛も欲望も孤独も、すべてを受け止めて余りある懐の深さ。「殺したいほど愛してる」と言えば「殺されたって構わない」と軽やかに言ってのける。その場しのぎで付き合うには身が持たないほどの熱量で注がれる「愛」という名の定の暴力を、終始笑顔で受け止め続ける藤竜也のかっこいいこと。そして私は理解した。阿部定事件は確かにあったけど、こんなすてきな人は絶対にいない。藤竜也が、理想的であればあるほど、これは幻想だと思い知らされる。現実をしっかり見つめようと思いました。
 (桜坂劇場・下地久美子)



関連するニュース







  • お知らせ


  • 琉球新報デジタルサービス



  • 会員制サービス






  • 他のサービス