「観光復活の切り札に」県内業界から歓迎の声 <沖縄・奄美 世界遺産>


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講習を受けるやんばる地域の認定ガイドら=2020年1月28日、国頭村辺土名の与那覇岳

 「奄美大島、徳之島、沖縄島北部および西表島」が世界自然遺産登録の勧告を受けたことで、県内の観光業界にも沖縄観光の魅力向上につながるとして歓迎の声が広がった。新型コロナウイルス感染拡大で落ち込む観光業界にとって久々の朗報となり、コロナ後の観光復活の切り札として期待が高まる。ただ、近年の観光客急増に伴う「オーバーツーリズム」の反省を踏まえ、やみくもに観光客を呼び込むのではなく、自然環境や地域住民の生活と調和した「持続可能な観光」の取り組みを求める声も強い。

 「持続可能」に課題

 沖縄観光コンベンションビューローの下地芳郎会長は「文化遺産と自然遺産の両方の魅力を持っている沖縄の存在感を、世界にアピールしていきたい」と意気込みを示した。観光資源として生かす上で、観光客への過ごし方の提案を変えていく必要があるとする。下地会長は「ガイドを伴って沖縄の自然をじっくり学んで楽しんでもらう形を目指さないと、大勢で押しかけて観光するだけでは自然環境への悪影響につながる。持続可能な観光が大きな課題となる」と話す。

 やんばる地域では、自然や文化の保全、ガイド中の事故の危険性を減らすことなどを目的に、認定されたガイドが案内する自主ルールを策定している。

 世界自然遺産の登録を見据えてやんばる地域の観光商品の開発に取り組んできた、JTB沖縄(那覇市)の杉本健次社長は「欧米の富裕層を呼び込むきっかけになる。そうすれば結果としてアジアや日本の富裕層も来るようになる。やんばる地域での過ごし方を提案していきたい」と喜んだ。その上で「県が掲げるSDGsを守るためにも、(観光客の)受け入れをコントロールする仕組みを作っていく必要がある」と指摘した。

 世界自然遺産登録を後押しする県内企業の集まり「世界自然遺産推進共同企業体」の発起人となった、前日本郵便沖縄支社長の比嘉明男氏は、国頭村安田の出身で、環境保護への思いは強い。登録勧告を喜びながら「登録して終わりではなく、これからが大事だ。先人が守ってきた自然環境を、子どもたちにつないでいくのが我々の役目だ」と思いを新たにした。

 比嘉氏は「まずは自然を守ることが第一だ。観光のほかに、登録地域の農産物に付加価値を付けて6次産業化するなど、いろいろな方法が考えられる。知恵を出し合っていかなくてはならない」と呼び掛けた。

 同共同企業体に参加する日本トランスオーシャン航空(JTA)も、登録を目指して、本島北部や西表島の清掃活動や子ども向けの環境学習会などを開いてきた。青木紀将社長は「環境保全と地域活性化の両立に取り組み、持続可能な地域づくりに務めたい」と話した。