非戦「医師だからこそ」…徳田安春氏が明かす日野原重明さんの言葉 那覇で憲法講演へ


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医療界から非戦を訴える意義を語る徳田安春医師=30日、浦添市の群星沖縄臨床研修センター

 新型コロナウイルス対策で検査を拡充し「ゼロコロナ」を目指すべきだと発信し、注目を集めた群星沖縄臨床研修センター長の徳田安春医師(57)。「人の命を救う医師にとって最も重要なことは、戦争をさせないことだ」とし、医師として平和活動をする重要性も訴えている。3日の憲法記念日には那覇市泉崎の琉球新報ホールで「基地なき平和な沖縄への道標―医師が沈黙を破るとき」と題して講演する。

 南城市出身。琉球大医学部を卒業後、県立中部病院で研さんを積み、2006~08年度は東京・聖路加国際病院に勤務した。平和活動に関心を持つようになったきっかけは、17年に105歳で亡くなった聖路加国際病院の日野原重明元院長の言葉だった。

 自身の送別会で、日野原元院長に医師にとって最も大切なことは何かと尋ねた。「戦争をさせないことです」。哲学者・カントの言葉を引用し、非戦が大切だと説かれた。思いもよらない答えだった。

 沖縄出身者として、戦争体験は親から聞いていた。1944年、小学生だった母は米軍の魚雷攻撃を受けて沈没した対馬丸に乗るはずだった。直前になって予定が変わり、結果的に難を逃れた。

 その体験を知っていたのに、医師としては平和を意識していなかった。「診察をして病気を治すことを専門とし、究極の予防という思考がなかった」

 以来、戦争反対の姿勢を明確にする。「アフガン戦争やイラク戦争などで軍人よりも民間人が多く犠牲になっている。戦争による被害は大きい」と指摘する。

 米軍基地は「社会問題だけでなく健康問題」と捉える。米軍関係者による事件事故の被害者や、米軍機の爆音などで健康を害した人たちは医療機関にかかるためだ。

 なぜ医師が戦争に反対するのかとの意見もある。「戦争が起きると、被害者を見るのは医療者だ」と反論する。

 戦争放棄をうたう憲法9条を改正する動きには危機感を抱く。「何も言わないのは賛成を意味する。沈黙を破るべきだ」

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 徳田医師が講師を務める憲法講演会(主催・県憲法普及協議会など)は3日午後1時半から。午後0時半に開場する。新型コロナウイルス対策のため、事前予約も含めた定員に達し次第、入場を制限する。