沖縄戦跡国定公園内にある糸満市米須の土砂採掘計画を巡り、県が採掘業者に自然公園法に基づく措置命令の発出に向けた弁明通知書を出した件で、採掘の届け出をしていた沖縄土石工業の永山盛也社長が30日、代理人を通して県に弁明書を提出した。永山氏は、玉城デニー知事と照屋義実副知事に謝罪を求める内容の陳述書も提出。「県の業務妨害により出荷できなかった場合の販売売上被害額」として、十数億円の試算も示した。
玉城デニー知事は同日、報道陣に対し「これから部局において内容を精査する」と述べ、弁明書の内容によって措置命令が変わる可能性については明言を避けた。県は5月14日までに正式な措置命令を出す。
永山氏によると、弁明書で「県は国立公園法を根拠に風景保護の必要性を指摘しているが、鉱山は沖縄戦跡国定公園内で、この法は適用されない」と指摘。「同区域での採掘事業は2008年12月26日付で前身となる会社が、条件付きで県の承諾を得ている。このときは景観保護や遺骨の問題について全く言及がなく、承諾書に記載された条件にも盛り込まれていない」ことなどを記載したという。
陳述書では、戦没者の遺骨が混じった土砂が辺野古新基地建設に使用される可能性を指摘する、沖縄戦遺骨収集ボランティア「ガマフヤー」の具志堅隆松代表について触れた。具志堅氏が永山氏の鉱山に無許可で立ち入ったことや、同鉱区で発見された遺骨はまだ沖縄戦戦没者という鑑定結果が出ていないことを指摘。その上で、県が具志堅氏の話に基づいて土砂採掘を止めることは、「法的根拠に基づかない一方的な個人感情を公的行政機関たるものが優先した」行為に当たり、「超法規的な権力の乱用」で「著しい人権侵害と営業妨害」であるとして、知事と副知事に謝罪を求めた。
概算被害額は、永山氏が独自に試算した。鉱山の可採鉱量に、独自試算の1トン当たりの単価を掛けて被害額を提示した。永山氏は本紙の取材に対して、「県は法的根拠をしっかり示して判断するべきだ」と強調した。