57年ぶり県内聖火リレー 「間近で応援できず残念だけど…」 名護市、密集避け異例の態勢 


社会
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沿道に観客のいないコースで聖火を受け継ぎゴールへ向かうHYのメンバーら=1日午後4時半ごろ、名護市民会館周辺(ジャン松元撮影)

 東京五輪の聖火リレーが1日、始まった。新型コロナウイルスの感染拡大に歯止めをかけるため、国の緊急事態宣言に準じた対応が可能になる「まん延防止等重点措置」が県内10市5町に適用される中での、夏の五輪聖火リレー県内開催は57年ぶり。石垣市では公道を走り、多くの人が沿道に詰め掛けた。一方、沖縄本島内では異例の無観客開催となり、会場の名護市民会館周辺は密集を防ぐために厳戒態勢が敷かれた。走者からは「特別なリレーになった」などの声が聞こえ、それぞれの思いを込めたトーチと笑顔をつないだ。
  
 午前10時、空は晴れ渡っていた。輝きを増した名護湾からの潮風が特設コースに心地よく吹いた。玉城デニー知事が、第1走者である県出身お笑いコンビ「ガレッジセール」のゴリさんのトーチに聖火をともした。ゴリさんはポーズを取って、最初の一歩を踏み出した。実際の聖火を見たときは足が震えるほど緊張したが、「短い距離だったが、五輪が始まる序章を担えて光栄だ」と喜んだ。

 地元の名護市出身という上間五月さん(30)=那覇市=は、琉球民謡を歌うことからうちなーかんぷーを結い、カチャーシーを踊りながら走った。沿道では一緒に活動する東直子さん(27)が三線を弾いてエールを送った。上間さんの父・吉保さんは「那覇で走る予定だったが、娘が名護で走れたのは縁。感慨深いさ」と喜んだ。走り終えた上間さんは「沖縄の伝統を発信できた」と感慨深げだった。

 「これはこれで特別なリレーになった」とミュージシャンのジョニー宜野湾さん(63)=南城市。57年前の東京五輪の聖火リレーを沿道で見た。今回は実際に走ってみて「僕の中でふつふつと何かが起こっている。この気持ちが歌になるかも」と喜んだ。

 リレー会場入口では走者や関係者を対象に検温のほか、直近1週間の体調管理シートの提示、PCR検査の陰性確認など、感染防止対策が徹底された。

 コースに隣接する国道58号沿いには「立入禁止」と書かれた黄色の規制線が数百メートルにわたり張り巡らされた。間隔を空けて警備員も配置され、目隠しの仮設フェンスも設置されたが、見物に訪れた近隣住民もいた。屋比久武子さん(75)=名護市=は友人と、リレー開始と共に訪れた。仮設フェンスが一部途切れた場所から、リレーを垣間見た。「一目でも見たかった。間近で応援できないのは残念だけど、走る姿と火をつなぐ光景は感無量だった」と拍手と声援を送っていた。

 ただ、厳戒警備の中で、外部から聖火リレーを見ようとする市民はほとんどおらず、人が密集することはなかった。