沖縄女性の入れ墨「ハジチ」 ブラジルでデザインに 沖縄3世がルーツ研究


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色の異なる二つのサイズの蜜蝋ラップ

 新型コロナ禍の自粛で自身を見つめなおす機会も増えた。沖縄へ行ったことがなく、銀行員からファッションデザイナーに転じた當眞アンドレイア・裕美さん(31)=与那原町、南城市3世=も昨年から自身のルーツを調べるようになった。

 當眞さんはサンパウロ市生まれ。サンパウロ大学の会計学科を2011年に卒業後、銀行員として勤務した。夢だったファッションデザイナーになるために13年からファッションの大学に通い、14年に銀行を退職した。その後はドレスのアトリエやドレスレンタル店、アパレルメーカーで二つのブランドを担当した。

 20年にビルバオ国際アート&ファッションコンテストに参加し、1200人の出場者からファイナリストに選ばれた。その後、蜜蝋(みつろう)ラップに使うフェミニズムをテーマにしたイラストをいとこに依頼された。母親のトゥシビーで沖縄に関する情報を調べているときに、ハジチ(針突)に出会った。ハジチの施された手でマカイ(どんぶり)を持つ母親を描いた。それがハジチをテーマにした最初の作品となった。

 ハジチをテーマに研究を続け、ジーンズの生地をダメージ加工した作品を作る。母親の顔を描いた部分はやすりで加工し、ハジチの施された手は漂白剤で加工をしている。その二つの部分は一見二次元のイラストのようだが、分解でき、顔と手の各パーツを組み合わせることで衣装に変化する。

 今年1月、ジャーナリストでテキスタイルデザイナーのモーニカ・オルタ氏の誘いを受け、Moda―Brasil(ブラジルファッション)主催のイベント「Desafio MODA―BRASIL」(ブラジルファッションの挑戦)の第1弾に参加した。そこでは三つのブランドが競った。2月27日に発表されたウェブ投票の結果、當眞さんのブランドが7352票中3020票を獲得し優勝を果たした。

 作品の動画ではハジチがブラジルへ移民したウチナーンチュの中で行われていたらどんな儀式だったのか、想像した様子を表現した。ファッション動画である以前に家族の描写ということに重点を置いた。

 作品を公開した後、親戚がハジチを施したおばあさんの写真を見つけたという。コンクールの活動を通して周囲の県系やブラジル人が沖縄の文化に関心を持つようになり、他府県との文化の違いなどを認識してもらえるようになったという。コンクール関係者もそれぞれのルーツについて調べるきっかけになったそうだ。

 ハジチをテーマにする中で日本語ができないのが一番大変で、数少ないポルトガル語や英語の記事をかき集めたという。今後は自身のウェブサイトでハジチの作品を展示し、販売もできるようにし、ハジチや沖縄に関するテーマの研究も続ける予定という。
(城間セルソ明秀通信員)