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「お茶くみは女性の仕事」が残る島 男性優位の風潮と少子高齢化<「女性力」の現実 政治と行政の今>20


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多良間村の二大行事で、年1回催されるスツウプナカ(節祭)=2015年

 宮古島と石垣島の中間に位置し、「離島の離島」とも評される多良間島。多良間村役場に非常勤職員として勤める女性は毎朝と昼、課内の職員にコーヒーやお茶を入れるのが日課だ。コーヒーに入れる砂糖は何杯、昼はアイスティーにするなど、それぞれの好みを把握する。職員らが使ったコップは帰宅間際にまとめて洗う。

 お茶くみとコップ洗いは職務規定に定められているわけではない。だが多良間村役場では、非常勤の女性職員の仕事に位置付けられ、男性はたとえ非常勤職員でも任されることはない。女性は1度、男性職員に家でコップを洗わないのか聞いてみた。男性職員の1人は「俺はそういうことをしたくないから、嫁を外に出さないようにしているんだ」と返答した。

 かつては全国各地の役所や会社で見られた光景だったが、男女共同参画社会の機運が高まり、最近では軒並み「女性非常勤職員のお茶くみ、コップ洗い」は廃止されている。

 多良間村議会ではこれまで、女性が村議を務めたことはない。村役場では2018年度に初めて課長職に女性が登用され、現在は2人の課長がいる。指導的立場への女性の登用が進まない理由について、村総務財政課の仲宗根春光課長は「今までは『女性は家事』の意識が強く、数も少なかったが、採用も増えており管理職の登用はこれから進むだろう。非常勤職員のお茶くみも多少は残っているが、だんだんと見直されていくと思う」と説明した。

 島外出身の40代女性は「島では女性はあまり表に出ない風潮がある」と説明する。島の二大行事、「スツウプナカ」と「八月踊り」は男性中心で催される。八月踊りの練習は1カ月前から始まり、男性は毎晩練習に励む。宴会も開き、女性がつまみを準備することが多いという。

 女性は「男性は大小さまざまの行事が最優先され、付き合いで家を空けることが多い。子どもができたら、女性はきちんと働けなくなる」と語った。

 こういった島の男性優位の風潮に耐えきれず、島出身の男性と結婚して移り住んできても、数年後に離婚して出て行ってしまう女性もいるという。

 村の大きな課題は少子高齢化だ。昨年10月にまとめた「第2次村人口ビジョン・総合戦略」の最も可能性が高い推計では、15年に1194人いた人口は、55年後には666人に減るとされる。

 15歳未満と65歳以上の非生産年齢人口1人を、15~64歳の生産年齢人口1人以上で支えられるのは25年までとした。このまま少子高齢化が進めば、島民の生活に重大な影響を及ぼすことが危ぶまれている。対策として移住者の受け入れが挙げられている。

 非常勤職員の女性は「妻は家事や育児を押し付けられ、夫は地域の付き合いが多い。沖縄の田舎はどこも似たようなものではないか。少子高齢化が進む原因の一つだ」と語った。

(梅田正覚)


 

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