沖縄の基地負担は増す恐れ 国民投票法改正案で日米軍事一体化に加速


この記事を書いた人 Avatar photo 琉球新報社
住宅地や沖縄国際大学(右下)に隣接する普天間飛行場(2014年7月)

 憲法改定手続きに関する国民投票法改正案が、今国会で成立する見通しとなった。改憲の中身の議論はこれからだが、自民党は有事の際に政府の権限を強化し、私権の制限につながる可能性がある改憲の方向性を、既に打ち出している。改憲の動きが進むことで、米軍と自衛隊の基地が集中する沖縄では負担と危険性が増す恐れがある。

 自民党は2018年に示した改憲4項目で、戦力不保持を定めた9条への自衛隊明記や、緊急事態条項の新設を掲げている。12年にまとめた改正草案では自衛隊を「国防軍」とするとしており、自衛隊の役割拡大を志向している。

 米軍は20年から、陸上自衛隊で離島防衛を担う水陸機動団と、県内で共同訓練を実施している。9条が改定され、日米の軍事的な一体化が進めば、沖縄の基地、演習負担が重くなるばかりではなく、米中対立が激化する中で有事の際に戦場となる恐れが高まる。

 緊急事態条項も、緊急時に内閣が国会の承認なしで法律に代わる政令を定められるなど、有事の際の政府の権限強化や私権制限が想定されている。自民党の改憲草案は、幸福追求権の尊重について「公益および公の秩序に反しない限り」という条件を記述しており、個人の権利よりも国家を優先する色が濃い。

 沖縄では、各種爆音訴訟で飛行停止が認められないなど、基地問題を巡って個人の権利に制限がかけられてきた。政府与党は今国会で、防衛施設の周辺1キロ圏内の土地の利用について調査・規制ができる法案の成立も目指している。

 改憲論議の加速はこうした私権制限の流れに拍車を掛けることが見込まれ、防衛施設が集中する沖縄により大きな影響をもたらしそうだ。