【識者談話】雇用調整助成金の不正受給 悪質事案は立件の可能性 喜多自然弁護士


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 雇用調整助成金は助成内容が拡充され、手続きが簡素化されて周知が進んだ。一方、新型コロナウイルスの感染拡大の影響で、企業の雇用維持や資金繰りが厳しく、こうした背景が不正受給が発生しやすい状況につながっている。

 不正受給が発覚すれば、助成金の返還を求められるほか、悪質と認められた場合は詐欺の疑いで刑事事件として立件されることもある。事業主は制度内容を理解した上で申請することが大切だ。手続きを代行する社会保険労務士(社労士)も、書類内容に不自然な点がある場合、事実の確認を行うなど注意が必要だ。

 コロナ禍が長期化し、収束の見通しがつかない中、事業者の事業継続自体が困難になっている。雇用調整助成金だけでは、雇用の維持を図ることはできない。

 不正受給が発生する背景を踏まえ、事業主の事業継続性の確保と労働者の生活保障について、国が経済的な補償や支援策などにきちんと取り組むことが必要だ。