不正受給、雇用予定の2人の分も…ダイビングショップ「無知の悔恨」


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 今年2月、沖縄労働局が県内で初めて雇用調整助成金(雇調金)600万円の不正受給を認定した、恩納村のダイビングショップ代表の男性が、8日までに本紙の取材に応じた。代表は県外から雇い入れる予定だった、従業員2人の雇用契約書を偽造し雇調金を受給した。雇用予定だった2人は新型コロナウイルスの感染拡大のため来県せず、従業員になっていない。代表は「2人が沖縄に来たら(休業手当を)渡すつもりだった。不正受給の認識はなかった」などと釈明した。

 代表は、過去に在籍した2人を在職者と偽って助成を申請した。県が独自に行う雇調金の上乗せ助成は受給していないという。代表の依頼を受けて申請を代行した社会保険労務士(社労士)は、雇用契約書を直接確認することはなかったが、代表から渡された従業員名簿に従って申請したと説明する。「毎月の申請では、内容を代表に確認して印鑑をもらっていた」と話し、不正に関わっていた認識はなかったとしている。

 代表によると、雇調金の申請は昨年3月に社労士を通して始めた。4~8月ごろまでの約半年間、雇用予定だった2人を含め従業員7人分の休業手当の助成を申請し、計約600万円を受給した。11月に沖縄労働局の調査が入り、不正受給が発覚。今年2月以降に違約金も含め720万円を支払った。

 沖縄労働局は「雇用契約を交わしていない人は申請の対象外だ」と説明する。雇調金の不正受給が発覚した場合、全受給額の返還を求めている。

 このダイビング・ショップでは毎年、夏場の繁忙期に県外から従業員を雇っており、雇用予定だった2人は過去に在籍したことがあるという。代表は雇用していない従業員分の雇調金を受給したことについて「無知だった。2人が来ることができなくなった時に労基署に手続きを確認すればよかった」などと述べた。

 一方で代表は他の従業員5人は適切に休業させていたとし、「返金は不正が認定された分だけでいいと思う。自分は(違約金などを)払いすぎている」と主張した。

 (比嘉璃子、梅田正覚)


<用語>雇用調整助成金

 新型コロナウイルスの感染拡大などで休業せざるを得なくなった場合、事業主が従業員に支払った休業手当の一部を国が補填(ほてん)する制度。一部でも不正受給が見つかった場合、受給額の2割に当たる違約金と、全受給額を返還することとなる。さらに雇用関係の助成金が5年間不支給となるほか、事業所名が公表されたり、詐欺罪で刑事告発されたりする場合もある。