「環境の保全に有意義」「米軍の廃棄物残存で登録は不自然」 研究者の見方<沖縄・奄美 世界遺産>


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国際自然保護連合(IUCN)の勧告で、世界自然遺産指定に向けた管理計画の中に組み込まれるよう求められた米軍北部訓練場=2016年10月、東村(小型無人機で撮影)

 沖縄・奄美の世界自然遺産登録をIUCNが勧告したことについて、同地域の生態系を研究する学者らは「生物多様性のホットスポット」である地域の学術的価値を改めて強調し、環境保全につながることを期待した。一方、米軍北部訓練場の返還地からは、米軍のものとみられる廃棄物が相次ぎ発見されていることから登録を疑問視する声もあった。

 植物の分布などを研究している琉球大学理学部の久保田康裕教授は「南西諸島は生物多様性のホットスポットとして学術的に貴重な地域で、国際的にも知られている。生物多様性の保全上の『かけがえのないエリア』としてトップにランクされる地域でもあり、世界自然遺産登録は自然環境の保全と適切な利用を図る上で有意義だ」と語った。

 北九州市立自然史・歴史博物館館長で、イリオモテヤマネコなど固有種の研究に携わった伊澤雅子琉球大学名誉教授は「琉球諸島は特殊な地史が生み出した多くの希少種と特異な生物相を有する、生物多様性のホットスポットとしての価値が高い。この地域の自然への理解と保全への活動が進むことが期待される」とコメントした。

 一方、チョウ類研究者の宮城秋乃さんは、北部訓練場返還地の調査で放射性物質を含む電子部品や砲弾などを発見していることを踏まえ、「米軍の廃棄物が大量に残っている状態での登録は不自然だ。私が発見しなかったら生態系に悪影響を与えていた。この状態で登録となると、ほかの世界自然遺産の価値も疑わしくなる」と指摘した。「米軍基地があったおかげで自然が守られたという幻想が、政府のプロパガンダとして利用される」と懸念した。