高校生の薬物乱用 見えないSNSの実態に教諭ら危機感 指導方法に苦悩


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 沖縄県内の高校生ら少年3人が覚醒剤所持容疑で逮捕されるという衝撃の事件を受け、学校では薬物の乱用防止に関する授業が進められている。若者の間で薬物がまん延していると指摘されるが、ツイッターやインスタグラムといった会員制交流サイト(SNS)など、学校からは見えない場所で事件に巻き込まれる実態があり、現場は指導方法に頭を悩ます。

高校生らが覚醒剤所持容疑で逮捕された事件を受け、那覇商業高校で実施された薬物乱用防止の特設授業=4月28日、那覇市松山

 「(逮捕された少年らは)ずっと前から覚醒剤の話をしていた。近寄らないようにしていた」

 事件後、県立高校の教諭に生徒から情報が寄せられた。高校は少年らが住む地域の近隣にあり、少年とつながりがある生徒もいるという。教諭は「薬物は子どもたちの身近にあると実感した」と危機感を強めた。

 県教育委員会はゴールデンウイーク前に薬物乱用防止に関する特設授業を実施するよう各県立学校に通知した。この高校でも授業を行い、先輩や友人から誘われた時の具体的な断り方を生徒と一緒に考えた。授業後、生徒が教諭を訪ね「教えてくれて良かった」と感想を言うなど、普段以上の反応があったという。

 ただ、薬物まん延の実感が湧かず、苦労する事例もある。別の高校の生徒指導担当教諭は「生徒指導の教諭同士は4~5年前から危機感を共有しているが、学校に戻ると温度差を感じる」と打ち明ける。

 教諭の学校では生徒を対象にアンケートを実施したが、見聞きしたことを含め薬物に関わったことがあるという回答はゼロだった。「本当にないのか、それとも学校のアンケートだから答えにくいだけなのか」。生徒指導担当の勉強会では、薬物乱用の低年齢化に関する情報があるだけに、安心はできなかった。

 生徒指導担当の教諭が口をそろえて対策が難しいというのがSNSだ。今回の事件は、SNS上で隠語を使い、違法薬物を売買していた。薬物に限らず、ネット上のトラブルは頻発しており、現場は対策に手を焼いている。

 南部の高校で生徒指導を担当する男性教諭は「いじめや法に触れるような行動がSNS上にアップされている。それを見た外部の人から学校に連絡があり、指導することもある」と明かす。「教師は生徒のアカウントまで把握していないので、外部からの問い合わせで初めて気付く。SNSとの付き合い方を考えないといけない」と語る。

 ある教諭は「若者の間で薬物がまん延しているというが、具体的な情報は把握できない。SNSとの付き合い方を含め、学校の指導だけでは限界がある。家庭や地域との連携は欠かせない」と話した。

 (稲福政俊)