沖縄戦跡国定公園内にある糸満市米須の土砂採掘計画を巡り、県が事業者に「措置命令」を通知し、今後は事業者側による措置の実施に焦点が移ることになった。県は措置命令について、戦没者遺骨情報収集センターなど専門分野の見方も踏まえて、事業者と協議していく方針だ。
14日の記者会見で、玉城デニー知事は「戦没者の遺骨が混入した土砂が工事や埋め立てに使われることは、先の大戦で亡くなった方々を悼む心を持つウチナーンチュの1人としてあってはならない」などと強調し、事業者に「人道的な配慮」を求めた。
県は今回の措置命令で、県民の心情や主観を含むことをあえて強調するため、目に見える「景観」と区別して「風景」という表記を意識的に使っている。地元の糸満市が県への意見書で、採掘予定地について周辺に慰霊塔やガマなどの戦跡が存在し、海岸線につながる緑の風景が形成される「歴史の風景」と表現したことを受けたものだ。
一方、県は今回、開発の中止命令は見送った。玉城知事らの説明によると、自然保護法は「鉱業権等の尊重」もうたわれており、国定公園内の風景を保護する公益と、鉱業権制限について議論した結果、禁止制限を命じることは「極めて困難」と判断したという。
県の対応について、反対行動を展開する市民からは、事業者が措置を取った上で、協議が調った場合には行政的な制限がなくなり、採掘が進むのではとの危機感も渦巻く。
ただ、県関係者によると、県は措置命令で事業者に「協議」を盛り込んでおり、事業者が協議前に採掘した場合、中止命令にも踏み込む構えだという。骨片も含めた遺骨収集への対応を求めるなど、措置のハードルを高くすることで、事実上、開発が難しい状況にする可能性もある。土木技師で沖縄平和市民連絡会の北上田毅氏は「事業者との協議で県がどこまで毅然(きぜん)と対応できるかが問われる」と強調した。 (池田哲平・明真南斗)