亡き父と83年ぶりの「再会」 座間味村の田中美江さん、発見の戦前写真と対面


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 田中(旧姓高江洲)美江さん(90)=沖縄県座間味村=はこのほど、7歳の時に戦死した父親と、83年ぶりに写真を通して“再会”した。田中さんの父、高江洲正次さん(享年32)は1938(昭和13)年、日中戦争で座間味村最初の戦死者となり、小さなお守り袋に入った骨と遺品だけが、島に帰ってきた。

先日見つかった、亡き父の写真を持つ田中美江さん=座間味村内

 遺影は写真を写生したもので、原本の写真は今まで田中さんも見たことがなかった。おいの高江洲博美さん(62)が、先日家の整理をしている時に見つけた。

 田中さんは41年に戦争遺児の沖縄代表として靖国神社へ参拝している。靖国神社に合祀(ごうし)されている父と対面するために、沖縄の離島から、初めて日本本土へ渡ったという。船の中では、夜に船員が「電気を漏らしたら鹿児島までつけませんよ」と言って歩いていたと、当時のことを振り返る。靖国神社までの途中、奈良公園、皇大神宮、明治神宮、などの名所も回ったという。

 靖国神社では「当時の内閣総理大臣が馬に乗って、私たちの前を手を挙げながら回っていた姿が一番、目に焼き付いている」と話す。係の人に「鏡のところにあなた方のお父さんがまつられているから」と言われ、心の中で父と会話をし手を合わせた。その時のことを書いた作文「父に対面して」が沖縄一に選ばれ、当時の新聞に載ったことを今も誇らしそうに語った。

 あれから80年、田中さんは写真に写る父と、しっかり目を合わせながら「お父さん、久しぶり」と声を掛けた。絵では分からなかった、正次さんの目の輝きと、田中さんにそっくりな口元。何度も写真をなでて「私はお父さんに似ている、と言われていたんだよ」と笑みをこぼした。

 また、田中さんは、当時一緒に靖国神社に行った方と誰とも連絡が取れなくなっていることを嘆き、80年前の仲間との再会も願っている。情報はndk_kyb@outlook.jpまで。

 (山本和通信員)