行政は「頭脳」偏重か? 琉球新報が県内11市から得た市長部局職員の人事配置を示す2019年度のデータを、元市職員の研究者に分析してもらった。すると、「行政の頭脳」とも呼ばれる、総務企画系部署の管理職の数は比較的多い傾向にある一方、マンパワーが必要な福祉子ども医療系部署では管理職が少ない傾向にあることが明らかになった。研究者は「総務企画系部署は生産性を意識していない旧態依然の人事配置で働き続けている」と指摘する。
どういうことか。11市の全職員数に占める総務企画系部署の職員の割合は23.9%で、そのうち管理職は33.2%、管理職1人当たりの下で働く職員の数は7.2人だった。一方、福祉医療系部署の職員は43.6%で、うち管理職は26.8%、管理職1人当たりに就く職員数は13.9人だ。窓口業務が多い福祉医療系の方が、管理職1人でより多くの職員をマネジメントしていることがうかがえる。
11市の総務企画系部署の女性職員の平均割合は23.9%、福祉医療系部署は43.6%。総務企画系の職員は男性が、福祉医療系は女性が多い。さらに、この数字には表れていないが、福祉医療系部署には窓口業務などを担う非常勤職員が多く、その多くが女性だ。
分析したのは、お茶の水女子大学大学院博士前期課程に在籍してジェンダー論を研究する玉城尚美氏だ。県内の市に約30年間勤務した後に退職し、自身の経験を生かしつつ研究を進めている。「総務企画は市長肝いりの政策を担当する忙しい部署と言われているが、本当にそうだろうか。一般的に、福祉医療系より多くの管理職がいて、男性職員の長時間勤務を前提とした働き方が常態化している。管理職ばかりが多くて部下は少ない。生産性の視点が欠けている」と疑問を呈する。
玉城氏は役所の中枢に位置するのは、「日本的雇用システム=長時間労働」を極めた男性職員だと解説する。「何よりも大切なのは、役所を思う滅私奉公の気持ちだ。長時間労働が忠誠心のリトマス紙で、総務企画部署でふるいに掛けられる」と説明する。そのため、小さな子どもがいる女性や育児参加に積極的な男性は、総務企画系の「管理職予備軍」にはなりにくいという。
管理職予備軍の男性職員はこういった長時間労働が常態化した総務企画系部署で3~5年間勤めて異動となり、後に管理職で戻る。管理職が自身の経験や組織の慣例から、同様の働き方や人事配置を再生産する構図が浮かぶ。
長時間労働の「関門」は、特にキャリアの向上を目指す女性にとって大きな壁となる。管理職予備軍から外れると、福祉医療系部署の限られた管理職ポストを目指すしかなく、男性職員も含めた倍率の高い競争に身を置くことになる。
玉城氏は「今の役所は、馬車馬のように働く健常者の男性をベースとした昇進評価となっている。だが、これから少子化や介護で長時間勤務ができる男性も少なくなってくる。長時間勤務を無くし、生産性を上げて、多様性を重視し評価する方向にシフトしないといけない。現場からは変化の声を上げにくいが、首長の決断で仕組みは変えられる。長時間労働に対する改革は市民のためでもある」と語った。
(梅田正覚)