【深掘り】沖縄「感染160人」に衝撃 県が緊急事態要請を検討する背景とは


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 沖縄県は17日、新型コロナウイルスの感染拡大を防ぐ措置として、政府に対して「緊急事態宣言」の対象地域に加えるよう要請する方向で検討を始めた。県関係者によると、15日に新規感染者数が過去2番目に多い160人に達したことの衝撃が大きく、医療提供体制を守るためには、先手の対策を打つことが重要だと判断したという。

 県が宣言の適用を要請した場合、政府の基本的対処方針分科会を経て決定することになるが、東京や大阪などの宣言期間と合わせると、適用期限は今月末までとなる。しかし、17日時点で政府分科会の次回の開催日程は定まっておらず、日程を考慮すると、短期間の宣言期間になる可能性もあり、流動的な要素も残る。

 1週間でもいい

 県が緊急事態宣言の適用要請を検討している背景には、医療現場の逼迫(ひっぱく)感がある。県幹部によると、17日の対策本部定例会議で、専門家の意見を受けた保健医療部から「新規感染者数が過去最多を超えていく可能性もある」との見解が示されたという。

 新規感染者数は、まん延防止等重点措置が始まった4月12日時点の水準まで再び増加しているほか、療養者数も過去最多を更新している。さらに、県の営業時間短縮の要請を聞き入れず夜遅くまで開いている飲食店も増え、若年層の感染者数が増加している。

 こうした状況を改善するために、酒類提供禁止や緊急事態宣言の適用など強い措置が必要だと判断した。県幹部は「たとえ1週間程度の短い緊急事態宣言であっても、人の動きを止めないと感染拡大を防げない。事業者には厳しい状況だが理解してもらうしかない」と語った。

 自粛意識薄らぐ

 昨年4月から5月下旬まで出された緊急事態宣言時は小中高校などが休校要請の対象となったほか、出勤者の減少などもみられ、人の流れを大幅に抑制した。その結果、感染者数が減少した経緯もあった。

 しかし、今回の緊急事態宣言は感染症対策を取った上でイベントなどの開催も可能で、昨年より制限が緩い面もある。ソフトバンク子会社のアグープの集計によると、5月16日の午後9時台の人出は県庁前駅が前年比58・5%増、牧志駅は同31・4%増、国際通りが同36・2%増となるなど、県民の外出自粛の意識も明らかに減退している。仮に緊急事態宣言の対象地域となったとしても、昨年のような強い人流抑制につながるのかは不透明だ。

 経済との板挟み

 一方、急転直下の県の方針転換に経済界からは不満が渦巻く。17日の経済対策関係団体会議で、経済界からは特に酒類提供禁止に強い異論があり、現状のまん延防止等重点措置の徹底で感染者の抑制に努めるべきだとの指摘が上がった。

 会議の出席者によると、県飲食業生活衛生同業組合の鈴木洋一理事長ら複数の出席者から、酒類の提供自粛要請に対して強く反対する意見が相次いだ。平行線をたどった会議の最終盤に、県が再度、提供自粛要請への理解を求めたが、同意は得られず「交渉決裂」(経済関係者)に終わった。

 県商工労働部の関係者は「感染症対策は保健医療部が担当だが、われわれとしては会議で出た経済界の厳しい反対意見を伝える」と話した。会議後、照屋義実副知事は「明日(18日)には決まらないかもしれない」と述べるにとどめた。

 感染者の増加に歯止めが掛からない中、18日の対策本部会議でどの程度の制限を打ち出すのか。人流抑制と経済対策のはざまで、県の判断に注目が集まる。

 (池田哲平)

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