[日曜の風・室井佑月氏]コロナと五輪 あたしたちが求めるもの


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室井佑月 作家

 「オリンピック・パラリンピックは世界最大の平和の祭典であり、国民の皆さんに勇気と希望を与えるものであるというふうに認識をしています。(中略)選手や大会関係者の感染対策をしっかり講じ、安心して参加することができるようにするとともに、国民の皆さんの命と健康を守っていく。これが開催をするに当たっての政府の基本的な考え方であります」

 これは14日に菅義偉首相が会見で述べた言葉だ。海外メディアのパンオリエントニュースのアズハリさんが、「日本にとって、東京五輪を開催するメリットとデメリット。そのバランスをどのようにお考えでしょうか」と質問した時の回答。

 14日の会見は、緊急事態宣言を9都道府県に拡大することについての会見だったんだけどな。あたしたちに勇気と希望を与えるって、それは平時のときの場合でしょ。

 いいや、平時であっても、今の五輪の在り方はおかしいと言える。膨らみに膨らんだ開催費は、五輪史上最大になってしまった。はじめはコンパクト五輪といっていたのに。そういえば「復興五輪」や「コロナに打ち勝った証し」という言葉も使われなくなった。ゴリゴリの賛成派が、被害者のいる震災やコロナでさえ利用したということがバレバレだ。

 それにしても菅首相は壊れたロボットみたい。同じことを何度も話し、そして話には中身がない。中身がない話だから、何度もできるのかもしれない。進展がないということで。

 感染症対策がうまくいっていない今というのは、国があたしたち国民の健康や命をないがしろにした結果だ。だから、「五輪なんてやってる場合か」という意見になる。首相はそれを分かろうとしない。

 もう分かれ。コロナ禍の中で、あたしたちが国に求めているのは、しっかりした対策と、しっかりした補償だ。五輪じゃない。

 ちなみに菅首相は、質問に対し、五輪のメリットしか答えなかった。それしか考えていないということなのか。こんな人が国のトップ。恐ろしい。

(室井佑月、作家)