米軍基地集中「50%以下に」…沖縄知事表明、戦略はどこに?


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国際都市形成構想について語る前泊博盛氏=宜野湾市の沖縄国際大学

 県は、沖縄の日本復帰50年に向けた米軍基地に関する政府要請を近く行う。玉城デニー知事は2021年度の県政運営方針で、基地負担軽減に向け、米軍専用施設の全国比を現在の約70%から「50%以下を目指す」と表明した。県が数値目標を掲げたことを評価する声がある一方で、具体策の欠如や実効性を疑問視する見方もある。日本復帰から半世紀と、新たな沖縄振興計画が始まる節目が1年後に迫る中、県政はどのような米軍基地の返還戦略と長期ビジョンを県民に提示するのか、注目が集まる。

 返還数値目標について玉城知事は、具体的にどこの基地を削減するかは明確にしていない。県議会が過去に決議した「在沖米海兵隊の撤退」が実現すれば、米軍専用施設面積は全国の約40%になるとの見方もあるが、知事がそこまで踏み込まなかった背景には、不安を抱える基地従業員や地主への配慮がある。

 沖縄国際大学の前泊博盛教授(安全保障論)は「基地の整理縮小と雇用、跡地利用はワンセット」だと強調する。その上で大田昌秀県政が1996年に策定した、全基地を段階的に返還する「基地返還アクションプログラム(AP)」と一連の跡地利用計画を描いた「国際都市形成構想」は「政府との交渉の強力な切り札だった」と指摘。現県政の参考にもなると提案する。

基地従業員の雇用について語る與那覇栄蔵氏=宜野湾市の全駐労沖縄地区本部

 大規模返還となれば基地従業員の雇用が不安視されるが、跡地が数十倍の経済効果を生み出すことは那覇市の新都心地区や北谷町のハンビー地区で証明済みだ。行政の責任下で再就職に向けた職業訓練やサポート体制を整えれば、雇用創出と人材のミスマッチは解消できると見据える。

 仲村未央県議(沖縄・平和)は日米両政府には「米軍専用」を自衛隊との「共同使用」に置き換えることで見かけ上、面積を減らす意向もあるため、「言葉のあやにとらわれないよう具体的な返還計画を可視化しなければ、実質的な負担軽減にはつながらない」と警鐘を鳴らす。APは実現はしなかったものの「日米両政府が沖縄の本気度を見て日米特別行動委員会(SACO)が動いたことは大きな成果だった」と振り返り、沖縄から再びうねりを作り出す必要性を説いた。

 一方、全駐留軍労働組合沖縄地区本部(全駐労)の與那覇栄蔵執行委員長は、「基地返還計画は日米両政府が決めるもの」だと冷静に見る。県が具体的な返還計画を提示することで日米両政府と折り合いがつかず、基地の固定化につながりかねないと危惧する。

 「基地が無いに越したことはないが、返還後に基地従業員9千人の雇用が守られるのか不安は拭えない。玉城知事も同じ思いではないか」。與那覇氏は「従業員が路頭に迷わないよう、県政には現実を直視した政策を練ってほしい」と訴えた。(当銘千絵)