【東京】事件を起こした18、19歳の厳罰化を図る改正少年法が21日の参院本会議で可決、与党などの賛成多数で成立した。異論も根強く、採決で野党から反対意見が上がった。6日の法務委員会には、県人2世の大山一誠さん(42)が参考人として出席。貧困から非行に走り、少年院で立ち直った経験から「改正反対」を切々と訴えた。改正法は来年春に施行されるが、「立ち直りの機会が奪われてしまう」と危機感を募らせている。
「このまま黙っているわけにいかなかった」。大山さんは、参考人として国会に立った動機を語った。神奈川県茅ヶ崎市で水道工事の会社を営む。その傍ら、少年院での講話活動を続ける。10代の頃に非行に走り、千葉県内の少年院で更生のきっかけをつかんだ経験があるからだ。
「入所したのは、まさに今回の法改正で議論されている、18歳から19歳までの間。自分と同じ立場にある少年たちのためにも見過ごせない」
両親は沖縄県出身。2人が東京に働きに出て、やがて大山さんが生まれた。
2歳違いの弟が生まれて家族で沖縄に戻ったが、両親の離婚を機に、3歳で母親と再び上京した。母子3人の生活は貧困にむしばまれた。ライフラインが頻繁に止まり、かびだらけのパンを食べさせられたこともあったという。
「しつけ」と称した母親からの暴力も大山さんを追い詰めた。「母親を殺したいほど憎んだが、仕事をするようになって少しは理解できるようになった。明日生きるためのお金がない。そのストレスが追い詰めた」
大山さんは小学校に上がると同級生に暴力を振るうようになり、中学生でさらにエスカレート。高校中退後に暴行事件で2度逮捕され、ナイフを使った事件で3度目に捕まった時、少年院に送致された。「貧乏を憎み、社会を恨んだ」
凝り固まった心を解きほぐしたのは、少年院での「内省」だった。「壁に向かい正座しての黙想を30分。日に5~6回行う。この時、初めて『人生を変えよう』と思った」。出院後は非行を重ねた友人との交流を絶ち、ダンスにのめり込んだ。
25歳の時、自暴自棄から軌道修正できた経験を語り始めた。少年院で出会った恩師との再会がきっかけだ。「仕事をして、ダンスに夢中なこと。出院後の姿を見せてほしいと言われた」。ためらいもあったが、講話に耳を傾ける少年たちの姿が意識を変えた。
「昔の自分を見ているような気がした。人生の立て直し方が分からない。そういう子たちに自分の経験を伝えることが役割だと思えてきた」
法務委員会では、これまでに出会った少年たちの顔を思い浮かべ、思いのたけを記した12枚の原稿を手に答弁に臨んだ。大山さんは「再犯率は少年院より刑務所のほうが格段に高く、現行少年法は有効に機能している」と説明し、改正少年法に疑問を呈した。
「少年犯罪の背景には、私のように環境が起因する部分も大きい。今回の法改正はそうした問題に目を背けるものだ」。沖縄社会にもはびこる「貧困の連鎖」。改正少年法は来年春施行される。 (安里洋輔)