【深掘り】「根拠が不明」 玉城知事の「基地50%以下」要請に政府冷淡


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岸信夫防衛相との面談後、記者団の取材に応じる玉城デニー知事=27日、東京都の防衛省

 玉城デニー知事は27日、沖縄の日本復帰50年に向け、さらなる基地負担軽減を政府に要請した。名護市辺野古の新基地建設をはじめ従来の日米合意見直しも含めて求めたが、既存計画に固執する政府側との議論は平行線だった。新型コロナウイルスの感染拡大が続く中での要請に政府与党内には冷たい見方もあり、溝は深いままだ。

 県は当初2月中旬にも政府に要請する予定だった。コロナの感染拡大を受けて時期を模索した面もあるが、県議会与党や関係団体などとの文言の調整が長引いていたことが大きい。

 議論となったのは米軍専用施設面積の全国比について「当面50%以下を目指す」という数値目標を政府に求める上で、根拠が不明瞭だったためだ。いったんは海兵隊撤退の要求を明記する案も浮上したが、全駐留軍労働組合沖縄地区本部(全駐労)などからの反発で見直した経緯がある。

 沖縄は現在、緊急事態宣言の発令期間中だが、県は今回の要請が「不要不急ではない」と整理した。復帰50年を迎える2022年5月まで1年を切ったことから、県関係者は「政府に検討してもらう時間も必要だ」と話した。どの基地を削減するかという点は、あくまで日米両政府に検討を求める姿勢で要請に臨んだ。

 一方、政府側からは要請を受け止めつつも、冷淡な見方が見られた。

 岸信夫防衛相は、4月の日米首脳会談で米軍普天間飛行場の辺野古移設を含む「在日米軍の再編を着実に推進する」ことで合意したことに触れた上で、現行計画を「着実に実施する」と、計画見直しには慎重な姿勢を示した。

 防衛省幹部は「根拠が分からない数字を、なぜ求められるのか」と困惑した表情を浮かべた。別の幹部は、現行計画を進めるだけでも「米側との交渉は大変だ」と語り、計画の大幅な見直しに慎重な考えだ。

 現行計画にこだわる日米両政府に、さらなる削減の計画策定を求める壁の厚さを突きつけられた形だ。要請日程終了後、玉城知事は米軍専用施設面積の全国比を50%以下とした目標に「再編計画などが終わった先の、未来志向の提案だ」と位置付けつつ、関係団体と意見交換を重ねて戦略を立て直す考えを示した。

 謝花喜一郎副知事は「すぐに結果が出るとは思っていない。今回の要請行動は県として日本政府に、また全国に、安全保障体制をいかに考えるのかという提案の第一歩」だとし、今後もあらゆる機会を通して沖縄の現状を発信していくと述べた。(知念征尚)