【国頭】世界自然遺産候補地である国頭村比地の大国林道・長尾橋の下で26日までに、大量のごみが不法投棄されていることが分かり、村職員らが30日、現地でごみ袋16個分を回収した。イタジイなどが生い茂る林一面に、足の踏み場がないほどのチラシや生活ごみが散乱していた。橋の欄干には落書きも見つかり、発見者で現地ガイドの上開地(かみがいち)広美さんは「やんばるの自然の良さを伝えたいのに、本当に残念」と声を落とした。
同地域はやんばる国立公園内で「現在の景観を極力保護することが必要な地域」の第1種特別地域に指定されている。
チラシは那覇市に本社がある不動産会社のものだった。不法投棄した従業員は、捨てた理由について「ストレスがたまっていた。気晴らしにやんばるにドライブに行ったが、途中でむしゃくしゃしてしまい車からチラシを投げてしまった」と取材に答えた。現地ガイドらがごみを回収したことを伝えると「申し訳ないとしか言えない」と、声を落とした。
ごみの不法投棄は、廃棄物処理法違反で5年以下の懲役、または1千万円以下の罰金が科せられることがある。国頭村は31日に会議を開き、今後の対応を検討する。
またチラシのほか、ペットボトルや段ボールなどのごみも見つかった。木の上には立て看板や衣類、ロープが引っかかっていた。現地ガイドらは2時間以上かけて足場の悪い場所でごみを集め、橋からごみ袋をロープでつり上げて回収した。
世界自然遺産候補地を巡るツアーバス「やんばる黄金(くがに)号」の桝田栄一郎ガイドは「本当に悪質だ。最低限のモラルを守ってほしい」と憤った。
長尾橋の近くにはタイヤなどの不法投棄もあった。日頃からやんばるの山林を巡回する「やんばるリンクス」の山川安雄代表は「資源を生かした観光をすべきで、この行為はそれと逆行している。自然を守ることが、観光の利用にもつながる」と語った。
国頭村役場世界自然遺産推進室の知花裕和係長は「残すべき自然を、県民が意識して見守ることが大切だ」と話した。