貸し切りバス81%減収 路線バスも33%減 「観光バスは実質ゼロ」


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那覇バスターミナル前を行き交うバス=2020年10月

 新型コロナウイルス感染拡大で団体観光旅行や修学旅行などが大幅に減少したことを受け、県バス協会(小川吾吉会長)に加盟する貸し切りバス事業者20社の2020年4月~21年3月の収入合計が、前年度の68億3810万円から81・8%減の12億4217万円に大きく落ち込んだことが分かった。沖縄本島と離島で路線(乗り合い)バス事業を営む協会会員10社の20年3月~21年2月の収入合計も、前年同期比33・3%減の45億2999万円に減少した。 

 県バス協会が31日までに取りまとめた。小川会長は「貸し切りバスで仕事が残っているのは一部の送迎バスなどだけで、観光は実質ゼロに近い。非常に厳しい状態だ」と話した。

 県内の貸し切りバス事業は、19年までクルーズ船で訪れるインバウンド(訪日外国客)や修学旅行の対応などで需要が拡大し、新規参入も相次いでいた。しかし、初の緊急事態宣言が出された20年4、5月は前年同月比で約95%の減少となり、同6月以降も前年の2割以下の状況が続いた。

 昨年11、12月には、政府の観光支援策「Go To トラベル」の効果もあって一時的に上向いたが、感染拡大の第3波によって再度約8割減と落ち込んだ。21年3月は、既に新型コロナの影響が出ていた前年と比べ増加したが、19年比では減少した。

 路線バス事業は琉球バス交通、沖縄バス、那覇バス、東陽バスの本島4社に離島6社を加えた10社の収入合計が、年間で33・3%減となった。出勤自粛の呼び掛けに伴うテレワークの普及や個人客を中心とした観光客の利用減少、自家用車など別の交通手段への切り替えが背景にあるとみられる。

 小川会長は、コロナ以前から路線バスの経営は厳しい状態にあるとして「路線バス事業者も、観光部門の収入で乗り合いの損失を穴埋めする会社が多かったが、観光客の減少で穴埋めもできなくなってしまっている」と指摘した。

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