土地規制法案、沖縄県内50離島も指定候補に 自衛隊施設の候補地は開示されず


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 【東京】1日に衆院を通過した土地規制法案は、自衛隊や米軍基地周辺だけでなく国境離島も規制の対象となる。政府によると、全国の有人国境離島地域148島のうち沖縄には50島と3分の1が集中し、規制対象区域の候補に挙げられている。南西諸島に位置する沖縄は、多くの海岸線周辺と内陸部に集中する防衛施設の周囲が区域指定の候補となり、私権が制限される場所が広範に及ぶ可能性がある。防衛省が候補となる自衛隊施設の提示を拒否したことも懸念を広げている。

 政府が衆院内閣委員会に提出した資料には、沖縄島と周辺離島、宮古島、石垣島など全50島の名前が盛り込まれ、法案に基づく区域指定の候補となった。

 政府は国会答弁で領海幅の起点となる「領海基線」の周囲や、領海警備の拠点となる港湾施設、行政機関の周辺を対象区域の候補に挙げたが、具体的には「国会の審議も踏まえて」検討を進めると述べるにとどめ、不透明感が漂う。

 一方、防衛施設について防衛省は、土地取引の際に事前届け出が必要となるなど規制度合いが強い「特別注視区域」候補として宮古島と与那国島を例示した。

 具体的な候補地一覧の提示については5月28日の衆院内閣委員会で、従来の「作成途上」との説明を修正し、リストはあるものの開示しない方針に転換した。防衛省は「施設の有する機能が一定程度推察されるほか、インターネット検索等による他の公開情報と併せて当該施設の機能を推察される」懸念があるとした。

 だが、対象区域となった場合には国民に分かりやすいよう明示する必要がある。法が成立した際に、影響を受ける周辺住民に対する説明責任を軽視する姿勢は疑問視されそうだ。

 防衛省は候補施設の数は説明しており、注視区域に全国四百数十カ所、特別注視区域に百数十カ所を挙げた。米軍施設も含めれば、県内の対象区域はさらに増える可能性がある。

 一方、海上保安庁は対象区域の候補として県内8施設を含む全国174施設を示した。中でも第11管区海上保安本部(那覇市)と石垣海上保安部の2施設は尖閣諸島周辺の領海警備を担当し、「指定する必要性、緊急性が高い」とする。
 (知念征尚)