【識者談話】土地規制法案の問題点は?調査内容が曖昧、財産権侵害も…加藤裕弁護士


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加藤裕弁護士

 土地利用規制法案は、どのような施設や行為を対象にするか、どんな調査をするのかが曖昧なまま、何の縛りもない内容になっている。プライバシー権や財産権などが侵害される恐れが高い、欠陥だらけの法案だ。本来、法の支配においては、民主的な手続きで権力に縛りをかけ、乱用を防ぐ仕組みづくりが大切となる。こうした仕組みがない法案を、まともな議論もせずに通すのは、民主主義にもとる。

 外国資本による基地周辺の土地取得を懸念し、安全保障上必要だという主張があるが、現時点では抽象的な懸念にとどまる。今、この法律をつくる必要性は何も証明されていない。人々の不安な気持ちにつけ込んで人権の制約を進めるもので、非常に危険だ。

 法案では国境離島自体をも「注視区域」に指定し、所有者の調査や、施設機能を妨害する行為への中止命令を可能にするとしている。国境離島の沖縄では、県民が知らない間に調査の対象になる可能性がある。

 規制の対象となる「機能阻害行為」もはっきりしていない。名護市辺野古で新基地建設への反対運動をしている市民など、政府に批判的な立場の人たちが基地周辺で何らかの行動を取ること自体に規制することもあり得る。重大な問題を抱えており、廃案にすべきだ。