新型コロナウイルス感染拡大に歯止めが掛からないとして、玉城デニー知事は県立学校の休校など、県民の行動への規制を一段と強化する方針を固めた。緊急事態宣言の指定から10日が過ぎたが全国最悪の感染状況に改善は見られず、医療界の提言に押される形で、強い措置を取らざるを得ないと判断した。こうした県の状況判断について「最初から強化していれば、ここまで悪化していなかった。すべて後手後手だ」(経済関係者)と批判も上がる。
県が休校などの追加措置に踏み切るきっかけとなったのは、2日夜に開かれた専門家会議の意見だった。会議の出席者によると、医療関係者から感染状況に強い危機感が示されたほか、緊急事態宣言下で玉城知事自身が東京へ2度も出張した行動などを巡り、県庁の対応を疑問視する意見も上がったという。
■「力が抜ける」
医療関係者の一人は「県庁内で危機意識が共有できていない。(県民に)渡航自粛を要請している知事が渡航したのだから、力が抜ける感じだ」と述べ、一連の知事の姿勢を批判した。
県幹部によると、2日夕方の時点で、3日の感染症対策本部会議の議題として経済的な措置などは予定していなかった。
さらに、専門家会議が開催される約1時間前の民放テレビ番組に出演した玉城デニー知事は、休校について問われ「学校を止めるということは、保護者の方々も休んでもらわないといけなくなる」と慎重姿勢を示していた。
結果的に知事の発信と対応は専門家会議の前後で揺れ、教育関係や経済関係の現場も混乱した。
■混乱
小中高校の2週間程度の休校が必要という専門家会議の見解が報じられると、県教育委員会には3日朝から市町村教委や保護者からの問い合わせが相次ぎ、職員は電話対応に追われた。県立学校教育課は5月28日に、県立学校に対して分散登校の実施を求める通知を出したばかり。わずか5日で休校へと方針を転換せざるを得なくなった。
県は市町村に対して小中学校の休校を求める考えを示した。しかし、本島南部市町村の教育長は取材に対して「休校になると、仕事を休まなきゃいけない保護者は多い。うちの地域は、1日当たり数人の感染者しか出ていない」と語り、休校はできないとの考えを示した。
小中学校の休校を巡り、市町村によって対応が分かれる可能性が高い。
■ダメージ
嘉数登商工労働部長ら経済分野の県幹部も急きょ関係団体を回り、大型施設の休日の休業要請に踏み切る方針を説明した。
終わりの見えない経済活動の自粛要請に、企業、業界には不満が募っている。県の方針について、飲食業関係者は「中途半端にだらだらと続くことが経済に一番ダメージを与える。最初から強い措置を取るべきだった」と手厳しい。
知事が大型連休中にバーベキューしている様子をSNSで投稿したり、渡航自粛を求める中で東京出張へ出向いたりしたことを引き合いに出し、「自分の姿が県民にどう見えているのか、自覚がないのではないか。感染を20日までに押さえ込む意志があるのか」と語気を強めた。
(池田哲平)