有料

娘のために始めた塾経営…今ではみんなのために 低所得世帯の支援も


この記事を書いた人 Avatar photo 稲福 政俊

 那覇市壺屋の学習塾インフィニティー進学スクールは、シングルマザーの仲宗根麻紀さん(39)が一人娘(13)のため、2019年に立ち上げた塾だ。中学受験のため娘を学習塾に通わせていたが、思うように成績が伸びず「ならば自分で理想の塾を」と思い立った。留学したくてもできなかった苦い経験を子にさせまいと、英語教育に力を入れつつ、経済的に厳しい家庭の支援にも取り組む。新型コロナウイルス禍で経営は厳しいが、塾を支える輪が広がっている。

居酒屋を経営する傍ら、娘のために塾を立ち上げた仲宗根麻紀さん=2日、那覇市壺屋

 「寝てる」。中学受験のために通っていた塾で見たのは、睡眠不足の娘の姿だった。居酒屋を経営する傍ら、弁当作りもこなしていたが「塾に子どもを放り投げて安心していた」と反省した。飲食店の設立に携わる仕事をしていた経験を生かし、塾を立ち上げた。

 生徒は娘1人という状態で始まった塾は次第に成長し、最大30人ほどが通うようになった。英国人講師を迎えるなど英語に力を入れ、小学生で高校生レベルの英検を取得する生徒も出てきた。

 経済的に厳しい家庭の子の月謝を減免するなど、利益は支援に注いだ。しかし、減免した子ほど辞めてしまう現実にも直面した。面談を重視し、多忙で子どもに関われない保護者も気に掛け、相談相手になっている。いじめや不登校、思春期の反抗など、母子家庭の経験を糧に寄り添う。奮闘する仲宗根さんを助ける存在は多い。数学教育で有名な「覆面の貴講師」数理哲人さんもその一人。居酒屋の経営者と常連という関係だったが、仲宗根さんが塾を立ち上げると聞くと、隔週で東京から訪れて指導している。

 コロナ禍で居酒屋は休業し、塾の生徒も10人にまで減少した。知人の紹介で塾を知った佐久本工機の佐久本嘉幸社長は、幼なじみの十黄進ホームの渡口尚樹社長とともに、2社で50万円の寄付を申し出た。2日、寄付金を手渡した佐久本社長は「優しい社会になったらいいな」と語った。

 仲宗根さんは「努力すればなんとかなるのは、ほんの一部。そうじゃない子にスポットを当てないと」と語る。コロナ禍でも「誰もがよりよい教育を」という目標に向かって進む。

 (稲福政俊)