沖縄で高級魚スギの養殖本格化 魚病対策整う 県外にも販路拡大へ


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この記事を書いた人 Avatar photo 田吹 遥子
「琉球すぎ」を手に、魅力をPRする太新の田端新也社長(右端)やヒガシマルの東勤社長(左端)ら=9日、那覇市の県水産会館

 総合水産・流通の太新(東京都)とヤンバル琉宮水産(大宜味村)が、高級魚スギの養殖事業を本格化させている。沖縄ブランド「琉球すぎ」として、6月から県内のスーパーや大手回転すしチェーンなどで販売を開始した。20度以上の高い水温が必要という性質から、沖縄は国内で唯一、養殖の適地となっている。今後、県外にも販路を拡大していく方針だ。

 県内では太新を中心に2007年ごろまで養殖が行われていたが、魚の病害対策が難しく、生産量は落ち込んでいた。法改正によって稚魚へのワクチン接種条件が緩和されて環境が整ったため、両社が再び事業に乗り出した。

 スギは南日本から台湾、中国沿岸南部の海域に生息するスギ科スギ属の海水魚で、味や食感はカンパチやブリに近く、コリコリとした歯応えで脂がのっており、刺身や塩焼き、照り焼きなど幅広い料理で用いられる。成長が早く、1年~1年半で体長80センチ、重さ5・5キログラムにまで成長する。

 両社は、古宇利島周辺海域に直径40メートルの大型いけす6基と、8メートルのいけす18基を設置した。ヤンバル琉宮水産の親会社である、ヒガシマル(鹿児島県)で生産した高品質の飼料のみで育てている。成魚は糸満市にある太新の工場で加工して県内外に流通する。

 現在は中国の海南島で仕入れた種苗を使っているが、来年以降は県内で人工ふ化させた種苗を活用する。当面の生産量は年間10万尾で、将来的に40万尾を目指す。

 9日、那覇市の水産会館で販売促進プロモーションが開かれた。太新の田端新也社長は「環境にも配慮した生産方法を取り入れている。沖縄生まれ、沖縄育ちの新たな県産魚として、県外や海外にも販路を拡大していきたい」と期待を寄せた。県漁業協同組合連合会(県漁連)の亀谷幸夫専務理事も「県産でこれほど脂ののった魚は珍しい。県民にも刺身や煮付けなどで広く楽しんでもらいたい」と述べた。