5月下旬、遺品整理、特殊清掃を担うビージーエム沖縄・リリーフ沖縄店(豊見城市)の作業員に同行し、新型コロナウイルス禍の影が垣間見える孤独死の現場を取材した。この日は那覇市のアパートで作業した。浦添市の現場とは一転し、部屋は雑然としていた。間取りは2DK。ごみ袋が目の高さまで積み上がり、部屋全体を暗くしている。亡くなったのは70代男性。死因は脳卒中とみられる。死後、1カ月半以上経過してから発見され、清掃は困難を極めていた。
ごみ袋の中には、さらにショッピングバッグがあり、バッグを開けるとさらにごみ袋、その中にショッピングバッグ…。何重にもなった袋の最後に缶詰が一つだけ入っていた。「こだわりが強い方だったのだろう」。作業員は袋を一つ一つ開け、中の遺品を取り出した。
男性はもともと人付き合いが少ない上、コロナ禍で行きつけの飲み屋も休業し、他者との交流がなくなっていたという。 棚に残された財布の周りに小銭が散らばり、ほとんどは1円玉だった。経済的な苦しさもうかがえた。
コロナ禍で人流を抑える施策は、孤独死を防ぐ取り組みにも影を落としている。
那覇市社会福祉協議会は独居高齢者の生活を見守る「見守り隊」の結成を自治会に働き掛けている。ただ、市内155自治会のうち、結成できたのは52自治会。自治会のない地域も多く、高齢者の見守りに空白地帯は多い。
5月23日からの緊急事態宣言後、地域の高齢者向けに開かれるサロンなども休止になった。感染状況が広がりを見せるにつれ、見守り活動は縮小を余儀なくされている。同協議会が見守り隊を対象に実施したアンケートからは、敬老会や訪問活動の中止など、コロナ禍の悩みがつづられていた。「孤独死が2件あった」「見守り対象者の死亡、介護施設への入所も多くなっている」との記述もある。
同協議会地域福祉課の真栄城孝課長や仲程大輔主査は「『交流を持ちましょう』とお願いしてきたのに、今は『距離を取ってください』と言わなければならない。見守り活動の土台がひっくり返されてしまっている」と語った。(稲福政俊)