【深掘り】基地反対だけじゃない 土地規制法は沖縄経済に影響も


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 安全保障上重要な施設周辺の土地利用を規制する法案が15日、参院内閣委員会で可決された。米軍基地などの周辺1キロ圏内を「注視区域」や「特別注視区域」に指定し、政府が地権者や居住者の情報を調べられるようにする。住宅街や商業地域に隣接して米軍基地が存在する県内では、住民生活や経済活動への影響が懸念される。

 米国などでも基地周辺の土地取引を制限する法はあるが、一般的な住宅から滑走路が見渡せるほど、生活圏と基地が近接する沖縄は事情が異なる。中部地域では複数の米軍施設の1キロ圏が重なり合っている。

 8割の土地が基地に取られている嘉手納町は全域が規制対象になり得る。米軍普天間飛行場が市の中央にある宜野湾市は大部分が1キロ圏内だ。北谷町も、観光地域である西海岸を含め広範囲が規制される可能性がある。

■観光地も

 住宅地域の北谷町栄口区は、嘉手納基地とキャンプ桑江の1キロ圏の両方に含まれる。島袋艶子自治会長は「自分たちの土地なのに調べられるかもしれない。秘密めいており不安だ。もっと学ばないといけない」とため息をついた。

 土地規制法案は土地売買時に個人情報や利用目的などの事前届け出を義務付け、罰則もある。

 県内の不動産業者は「早い段階での事前届け出を嫌がる事業者もいるかもしれない。ただ、対象がよく分からないままだ。土地取引への影響は未知数だ」と話した。県不動産鑑定士協会の高平光一会長は「運用次第では開発が難しくなるなどのデメリットが生じる可能性はある」と話す。

■運動弾圧

 米軍や自衛隊に対する監視活動は、県内で軍事行動や機能強化を外から検証する役割を果たしてきた。キャンプ・ハンセンで都市型戦闘訓練施設が建設されていた2004年、住民たちは闘争小屋と台を建てて工事を監視した。当時の稲嶺恵一知事も視察で訪れた。

 名護市辺野古の新基地建設でも反対する人々がキャンプ・シュワブのゲート前や砂浜近くにテントを設けて抗議を続けている。米軍北部訓練場や返還跡地で自然保護を訴えてきた宮城秋乃氏を県警が家宅捜索した動きもあり、運動弾圧への警戒感が強まっている。

 普天間爆音訴訟団の島田善次前団長は「実際の狙いは抗議行動への圧力だ。じわりじわりと締め付けてくるはずだ」と語った。
 (明真南斗、沖田有吾)